ヤヌス・メッツ「アルマジロ アフガン戦争最前線基地」(10)
DVDが発売されたので、ようやく観ることができた。
紛争が続いているアフガニスタンのアルマジロ基地に派遣されたデンマーク軍の国債治安支援部隊を描いた擬似戦争映画である。本来は派兵された兵士の様子を捉えたドキュメンタリー映画なのだが、最終的には戦争映画になってしまっている。
2008年から半年間の任期で若い兵士が紛争地で治安活動を行う。多くは担当している地域をパトロールするだけであったり、タリバンとの戦闘で被害を受けた住民の補償処理を行うといった、なにもない日々なのだが、敵は住民に混じり込んでおり、誰が敵なのか判らない。ベトナム戦争を小規模にしたものの、混沌な状況が続いている。
攻撃は全くない訳でなく、突然の路上攻撃を受けたり、地雷の被害を受ける度に戦闘が生じる。余所の基地では死者が発生しているもののアルマジロでは重傷だけで死者は出ていない。戦闘については、得体の判らない敵について嫌悪を感じるようになり、野良犬を殺す方が罪悪感を感じるといった台詞を吐くにいたる。
やがて、部隊は敵に対する奇襲攻撃を計画し、実行する。
アルマジロ アフガン戦争最前線基地 監督: ヤヌス・メッツ |
撮影は、監督らのスタッフ側が用いるカメラ2台と5人のメインで描かれる兵士のヘルメットに取り付けられたヘルメットカムによって行われたようだが、奇襲攻撃を行うシーンは攻撃部隊と基地の双方がきちんと描かれていて、事前にリハーサルが行われているのは間違いない。そのあたり、ドキュメンタリとしては危うさがある。
最後、任期を終えた兵士のその後が紹介されるのだが、ひとりを除いて、再び、アフガニスタンに戻ることを希望し、何人かは実際に戻っている。
状況的にはベトナム戦争に近いのだが、実際に国土を占領するような必要もなく、比較的安全な基地から戦線に通うといった感じである。ジャングルの中で常にいつ殺されるか判らないような緊張感は強いられていない。基地から砲撃する際の格好と云えば、Tシャツと半ズボンというラフな格好である。基地以外の戦闘は命懸けではあるが、たまのイベントである。
戦争と云うのは非常に刺激が強いのだろうと思う。戦闘で神経症になるほどでなければ、それなりの快楽があるのではないかと思う。キューブリックが「フルメタル・ジャケット」で描いた前半は、リアルではないことが明らかとなった。慣れが虜にするのである。
この刺激と云うのはギャンブルにも似通ったものがあると思う。戦争ではひとをひとと思わないようになって、殺すことが出来るようになるし、ギャンブルでは金が金ではなく、単なるチップになってしまう。このふたつは人間の本能に関係するようなもののような気がする。とにかく、精神や生活をダメにしないためにも、これらからはあえて距離を置くというのが残された方法であると思う。
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