皆川 隆「あの頃の軍艦島」(13)
軍艦島に関する久々の書籍。島にも日常的に上陸できるようになって、特殊なところではなくなったような気もする。しかし、もっと学術的な考察がなされてもいいと思うのだが、今ひとつのようである。
今回出された書籍は写真集で、軍艦島で少年期を過ごし、また炭砿で働いたひとによるリアルな軍艦島での生活が捉えられた映像が集められている。
写真の撮られた時期の詳細は判らないが、昭和20年代終わりから昭和30年代の頃のもののようで、一番軍艦島のひとの多かった時代のものと思われる。写真ではとにかく多くのひとが生活し、賑わっている様子が伺わえる。撮影者は家庭の都合で家族と分かれてひとり軍艦島の伯父のもとで生活せざるを得なかった。別に生活している弟妹のことを思って子供たちの写真が多くなったとのことだが、その子供たちの表情も実に明るい。子供もうじゃうじゃ、大人もうじゃうじゃいる。そんな活気のある頃の軍艦島の様子である。
あの頃の軍艦島 皆川 隆 (著) |
軍艦島は炭砿の場だから、労働は過酷で事故があれば死人が出てもおかしくはない。しかし、給料は余所に比べると随分とよく、家電の普及も高かった。事故で亡くなるとか仕事をやめると家族はすぐに島を追い出されるという過酷な環境下にあったが、それでも皆、日常をあたりまえように生きていたというのがよく判る。
巻末には軍艦島の地図があり、各々の撮影場所が示されている。実に丁寧である。
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