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2013.02.16

デヴィット・リンチの「デューン/砂の惑星」のこと

 最近、インターネットラジオをよく聴いている。ネット配信を用いたラジオ放送なのだが、誰でも無料で放送を行うことができる。番組はなかなか認識されないのでリスナーは多い番組でも1000人くらいなのだが、放送録音をアーカイブすると万単位のリスナーを持つことになる素人番組もあるようだ。

 そんなネットラジオでたまたま見つけたのがねとらじ デヴィット・リンチ部という20代半ばの2人の青年がやっている放送で、月1回の放送なのだが、毎月、デヴィット・リンチ作品を一本ずつネタにして話をしている。この人の作品と云うのはかなり感性に頼ったもので、まま、常人に理解出来ないものがある。それをああでもないこうでもないと話すのが、この放送の内容である。

 たまたま第一回目の放送から聴くことが出来たのだが、それはリンチのメジャー公開第一作目の「イレイザーヘッド」がテーマになっていた。あたしもこの作品は公開当時の高校2年の時になんの予備知識もなく劇場で観て、メジャーなハリウッド映画以外の映画を強く認識するようになったという、非常に有り難い作品だった。放送をしている2人の青年もおそらく初見でぶっ飛んで、惹き込まれたのだろうと思う。

 ということで、リンチの作品は「イレイザーヘッド」から始まって、「ロスト・ハイウエイ」「ブルーベルベット」「マルホランド・ドライブ」「エレファント・マン」「ワイルド・アット・ハート」と6本の放送を終え、佳境を迎えつつある。次回3月15日放送のテーマ作品は「ストレイト・ストーリー」、また放送の最後の締めくくりは最新作でリンチファンの間でも問題作とされている「インランド・エンパイア」と決まっているようだが、「デューン/砂の惑星」と「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最後の7日間」の取り扱いを迷っているようだ。

 「デューン/砂の惑星」についてはレンタルDVDの取り扱いが少ないことと、幾つもバージョンがあって、リンチの作品としてまずどれを観ればいいのか判らないとのこと。この作品も劇場で観た作品で、リンチの中でも異色で好きな作品なので、ぜひ多くの人に観てもらいたいと思っている。

 「デューン/砂の惑星」はリンチ自身の企画ではなく、フェリーニの「道」等を製作したディノ・デ・ラウレンティス(19-2010)によるものである。スティーブン・キング原作の映画化や「ハンニバル」シリーズも手掛けたややキワモノ好きのプロデューサーのようだ。リンチが撮った映画は4時間半にもなり、それでは公開できないということで、半分近くがカットされ、劇場公開されたのは137分のものである。

デューン 砂の惑星
デューン 砂の惑星

出演: カイル・マクラクラン, ショーン・ヤング, スティング, ケネス・マクミラン
ディスク枚数: 1
販売元: ビデオメーカー
DVD発売日: 2010/08/04

 原作を読んでいないので、どれほど劣化しているのかは判断できない。たしかにストーリーとしては随分と駆け足であるという感じはするのだが、それでも描かれているワールドの素晴らしさは十分に味わえる。「イレイザーヘッド」から始まって、リンチは悪趣味なのは確かなのだが、それがリンチの感性そのままの遠い世界で繰り広げられるのではなく、SFの世界の様式美における悪趣味として展開するので、常人にも十分に受け入れられる。普通の作品なら出すことが躊躇われる小人も舞台装置の一つとして出すし、さらに弾き飛ばすといったような事までしてしまう。原作の世界をどこまで拡大解釈して映像化しているか非常に気になるところである。

 リンチとしては半分もカットされたので、愛着のあまりないようで、公開から4年後の88年にMCAがTVスペシャルとして2夜に渡って「デューン」の完全版を放送しようとリンチに編集作業を要請したが、別のプロジェクトで忙がしいと不参加で、リンチが携わらないまま編集が行われた。新しく50分のシーンが加わり、10分の残虐・性的シーンをカットされた決定版が完成したが、オープニングの7分にも渡る物語解説の紙芝居等、リンチは再編集の出来を良しとせず、クレジットから自分の名前を削るよう要請し、結果的にアラン・スミシー監督作品となった。

デューン/砂の惑星 TV放映長尺版
デューン/砂の惑星 TV放映長尺版

出演: カイル・マクラクラン, スティング, フランセスカ・アニス
画面サイズ: 1.33:1
ディスク枚数: 2
販売元: パイオニアLDC
DVD発売日: 2002/08/23
時間: 189 分

 DVDソフトとして公開されているTV放送長尺版は実際の放送ではカットされた残虐シーンを復活させて、劇場公開版より50分長い189分版となっている。この作品ではTOTOの音楽が復活されているなどあるようだが、編集のテンポが悪く、リンチの劇場版とは違って非常にかったるい。また、TV放送のため、シネスコ(2.35:1)の両幅を大きくトリミングしてスタンダード(1.33:1)にしている。ストーリー的には判りやすくなっているかも知れないが、劣化編集で作品の質を落していることは間違いない。劇場版を観たうえで、参考のためにTV放送長尺版を観るのはいいが、TV放送長尺版だけを観たり、その反対の順番で観るのは絶対に勧めない。

 その他にもTV放送長尺版を再編集した177分版も存在するようだが、日本でのソフトはリリースされていないと思われる。リンチ作品は完全でないということから、00年にアメリカ・カナダ・ドイツの合作で3話のTVドラマとして再映像化され、公開された。こちらは原作に忠実であると好評を得ているようである。第2部も公開済み。

 ビデオ屋でリンチ作品として最も観なければならない「デューン/砂の惑星」は、カイル・マクラクラン主演、137分をキーとして探してください。

 ちなみに、チリの映画監督アルハンドロ・ホドロフスキーもこの「デューン」の製作にスタッフを集めるといったところまで進めていて、配給元が決まらず頓挫している。彼もぶっ飛んだ監督だが、リンチ同様、様式美を持ち備えている。しかし、作風からするとリンチ以上に生々しいものがあって、観るもの辛いものが出来たのではないかと思う。リンチは切れのいいところがあって、何かにつけて際立ちというものを持っているのだが、ホドロフスキーはずぶずぶなのである。こころの奥に忍び込んでは来るが、観るに辛い、いわゆるエンタテイメントではない作品が出来ていたような気がする。

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