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2012.01.19

イーストマン・コダックの破産

 今日、イーストマン・コダック社が米連邦破産法11条の適用を申請したらしい。

 コダックは学生時代にお世話になった会社である。あたしは映画研究会に所属していて、映画三昧の5年間を過ごした。映画を観るだけではなく、自主製作も行っていて、これが2年間ガッコに余分に通わなくてはならなくなった原因でもあった。

 当時の映画の自主制作はビデオではなく、8mmカメラを用いていた。今ではほんの小さなデジタルカメラでも動画撮影機能がついていたりしていて、簡単にビデオ撮影ができるのだが、あたしが学生だった四半世紀前はようやくホームムービーカメラが出始めたという頃で、親がどこぞの市会議員をしているという後輩のひとりがようやく持っているという感じだった。ビデオのレンタルが始まったのもこの頃で、レンタル料が800円くらいしてて、狂ったように毎晩のように借りて映画を観まくっていた仲間に感心していたものだった。

 撮影用の8mmフィルムはフジフィルムと件のコダックのものしかなかった。フジはシングル8という製品名で、コダックはスーパー8といった。このふたつはまったく異なったカートリッジで、シングル8はテープを巻いたものがふたつ並んでいるという細長い薄い形をし、スーパー8は一巻のフィルムを縦に並べた大きさの厚いものだった。

 このカートリッジの形状から判ると思うのだが、フジのシングル8はオーディオのカセットテープのように送り巻き戻しが自由にできるようになっていて、高級なカメラを使えば長時間の二重露光も可能だった。映研で所有していたシングル8用カメラのフジカZC1000は高機能で、特撮を使うような作品を撮る連中は必然的に、フジのフィルムを使うことになっていた。

 コダックのフィルムはと云うと、二重露光はシーン変換に用いるオーバーラップが5秒くらいしかなかったと思う。

 しかし、フジとコダックのフィルムはひと目で判るくらいの特徴があって、フジはとにかく青みがかる傾向があって、露出が足りなければ真っ青という絵になってしまっていた。それに対してコダックはやや赤みがあるものの暖かい鮮やかな発色で、条件が揃えば、美しい、という色を捉えることができた。

 あたしは監督作品を一本しか残さなかったが、もちろんコダックのフィルムを使って撮った。

 当時、8mmフィルムを使っての撮影というと、一巻が200秒の3分20秒しかなく、フイルム代・現像料で2000円くらいしていた。平均して1カットが3テイク、30分ものを撮ろうと思うとフイルム関係だけで最低でも6万くらいの費用が必要だった。サークルでの自主製作なので監督が一番出すものの、スタッフも費用を負担することになる。資金の調達のためにはいかにサークル内でスタッフメンバーを集めるかということも重要だった。

 あたしは大学に入って4年間はかなりのめり込んで製作にかかわっていたのだけど、その頃は大阪にコダックの現像所があって、現像に出して一週間くらいで戻ってきていたのだが、学業に戻る頃には日本国内の現像所は閉鎖されて、ハワイとかに送られていた筈である。ラッシュ(現像されたフイルム)をなるべく早く見るというのは製作において重要なのだが、半月以上かかって忘れた頃に撮影具合を確認するというのは最悪といっても良いくらいだ。後輩たちは苦労したろうと思う。

 コダックのフイルムは8mmだけでなく、トライXという銀塩カメラのモノクロフイルムも愛用させて貰った。このフイルムはやや粒子が粗く味があるのに加えて、長尺のものをカメラ屋が短く切って安くでカートリッジ売りしたようなものもあって、ほかのものを使うことはなかった。もちろん、自家現像し、これが楽しかった。

 コダックはデジタル化に乗り遅れ、このような事態に陥ってしまったようだ。カメラももうフイルムは特殊な時代に入って来てしまっているのだろう。何とも云えぬ寂しさを感じる。

 コダックの破産申請は再生が前提なので、再び、何かを見せてくれることを期待している。

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