« 訃報 小松左京 | トップページ | トビー・フーパー「悪魔のいけにえ」(74) »

2011.07.30

20数年目の峠

 週末の毎度の下の子とのドライプ。今日は先日断念した林道の走行を再び試みる。

 この林道の半ばには、窓峠というシャレた名前の峠があって、学生時代に道路地図で発見して以来、走破を4、5回試みたことがあったのだが、いずれも失敗していた。第一の関門は、県道が終わり、林道の入り口になるところの川である。

 コンクリート舗装道路のまん中を川が流れている。橋はなく、そのまま渡河しなければならない。小川なのだが、水量が増えると水深20cmくらいにはなる。原付で来た時は、ここでそのまま引き返したし、先日来た時も水量を確認して、そのままここで引き返した。本日は数センチの水深だったので、ついに完全走破を試みることにした。

 この林道は隣町から始まる10km程度のものなのだが、半分くらいはさらに向うの町のものとなる。実を云うといろいろネットで調べていて、隣町の部分の多くはダートなのだが、向う町はほとんど舗装されているということだった。ダートもフラットで比較的走り易いらしい。

 ということで、この川を軽く渡って、林道に入る。

 林道は狭く、うちのヴィッツならそれほど路肩を気にしなくても良いと云う程度で、大きめの車なら怖い道かもしれない。一級河川の上流を辿るような林道なのだが、ガードレールなんぞ全くなく、道を踏み外すと崖を落ちて川に落ちるといった状態である。離合は不可能で、離合できるような広さを持ったところもほとんどない。対向車が来ないことを祈るばかりの道である。

 コンクリート舗装は1km程度で終わって、ダートに入る。別にフラットであれば砂利道は怖くはないのだが、様相が変わってきた。

 道が侵食されてきて、轍が恐ろしく深くなったり、のたうち回るように溝が走るようになる。さらに路面はにぎり拳大の浮き岩で一面埋めつくされている。どうやらしばらく前の大雨で斜面が崩れたり、雨水の流水で道が荒れてしまったらしい。

 どう見ても、ごく普通のFF大衆車で走るような道ではない。しかし、延々バックで林道を抜けるような気力はないし、向う町に入ると舗装されているということで、このままこの道を走り抜けることにする。さらに最悪なのは、林道に入る頃からすでに携帯電話が圏外であり、何かあった場合は林道を歩いて下りて助けを求めなければならないことだった。

 轍に入り込むと車の底を擦るのは目に見えているので、轍を大きく外しながら走るのだが、乗り上げた岩にタイヤがすべりハンドルを取られる。車をひたすら上下左右激しく揺さぶり、5秒に一度は車底を激しく岩を擦りつけながら走るのは恐怖以外の何ものでもない。助手席の子供もかなりビビッているようで、車が動かなくなったらちゃんとJAFが来てくれるのか、しきりに尋ねてくる。喚ぶことができれば、もちろん来てくれるはずだ。

 車の底をあまりに擦りまくるものだからオイルパンが壊れないか、気が気ではない。途中、何かが割れるような音もしたりする。

 こんなガレ場(岩道)でFF車がスリップでもし始めると絶対に抜け出せなくなるのは、火を見るより明らかである。車が壊れずに動き続ける限りは絶対に止めないというつもりで、とにかくアクセルを踏み、一定の速度を保つ。轍を避けようとして横に避けると踏んだ岩が崩れ、その勢いで崖側に落ち込みそうになった時は、さすがにビビった。すぐにハンドルを返すとそのまま、道に戻れたので助かったが、極度の緊張で手足が震える。

 道が酷く荒れていたは1km強くらいだったが、まったく予期しないことだったし、これまでのドライブでは最悪というものだった。車を痛めずにそのまま走り切れたのは幸運だったと思う。こんな状態であると知っていれば、普通車では絶対に踏み込まない道だ。また、荒れた道は速度の制御のし易い、勾配のある上りだったので良かったと思う。下りであの道を走る自信はない。

 路面の荒れ方、崩れ方は半端なく、実際に、この先も本当に道があるのかと不安になるほどだった。カーナビがちゃんと林道を走行しているのを示しているから、とりあえず道が続くことを信じて走り続けたのだが、ロードマップだけなら、間違いなく、このまま進んでもいいのか途方に暮れていた筈である。

 それ以降もダートは続くのだが、フラットな砂利道で、すでに快走路としか感じない。

 標高600m強の峠からの風景。見通しが今ひとつよくないのだが、これが20数年、あたしが見たくて仕方のなかった風景らしかった。

 それから少し下ったところで、視界が開ける。隣町では植林はあまり行われていないようで、林道もまともに整備されていないのだが、こちららは林の中を通り、綺麗にコンクリート舗装されている。この林道区間の舗装はすべて簡易なコンクリートでアスファルトは全くない。

 10kmあまりの林道を10分ほどの途中休憩を入れても、30分くらいで走りぬけたのだが、心底、疲れたドライブだった。ちなみに後から知ったのだが、この林道は出る、という噂があるらしい。とうぜん、何も見なかったのだが、これまでに何本か林道を走ってきているが、そのなかでも雰囲気は良くないのは確かである。安らぎは余り感じられず、暗い、鬱とした感じが全体に漂っていた。

 林道を向う町に抜けて、すぐに見かけた古民家。趣きがあって良い。こういった様式に美しさを感じるのはどうしてだろう。こういった佇まいの民家もあと2、30年すれば、観光地でしか見れなくなりそうである。

 ひたすら疲れながらも、この後、広域農道を2本、初走行して、本日のドライブを終える。新しい農道は幅員もしっかりとられて整備されていて、さらに信号も少ないことから、国道よりはるかに走りやすい、感動的なものだった。

|

« 訃報 小松左京 | トップページ | トビー・フーパー「悪魔のいけにえ」(74) »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

フォト」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 20数年目の峠:

« 訃報 小松左京 | トップページ | トビー・フーパー「悪魔のいけにえ」(74) »