吉村昭「赤い人」(77)
吉村昭の小説は読み始めたら一気に読んでしまう。この小説も数日かかったが、まとまった時間を取ることが出来れば、4、5時間で読み終えてしまう筈だ。
赤い人というのは監獄に収監された囚人のことである。目に付く赤い着物を着せられていた。
明治14年に北海道で初めての集治監(刑務所)が作られる。何もない広野に集治監は作られるのだが、開拓すら囚人の手によって行われる。あまりに過酷な環境、そして重労働であり、本土で北海道へ移送が恐怖され、暴動も起こるくらいだった。北の地の集治監はいくつも作られ、40年に渡って、北海道の主要道路の整備に囚人が従事していた。
これは北海道の発展に関する裏舞台の話である。真冬の極寒の中で囚人に足袋を履かせることを許さず、草履で作業させる等、人権もまだ打ち立てられていない。囚人の死亡率は1割を越えてもまだ、事業は推し進められる。
今の日本からは思いも浮かばないことだが、100年も前は国が人間でないとしていた人間が多くいたのだ。
赤い人 吉村 昭 (著) |
吉村の小説の多くで、様々な事業でぼろぼろと倒れる人間が多く描かれるが、この様が彼の関心事になっていように思われる。事実をそのままに描こうとするストイックなスタイルなので、どういった風に彼がこれらを見ていたのか今ひとつ特定しかねている。しかし、もっと多くを読み進めるうちにそれが判るはずだと思っている。
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