市川崑「幸福」(81)
この懐かしい映画も今回初めてDVDになる。市川崑監督、水谷豊主演の「幸福」である。この映画を観たのは高校の時である。深夜ラジオで劇場鑑賞券のプレゼントをしており、応募すると当った。オールナイトニッポンで、散々、宣伝されていたのではないかと思う。市川の映画を劇場で観た初めての一本である。
今もそうなのだが、当時もすでに水谷が好きではなかった。どの出演作品を見ても、水谷はあの水谷であり、オーバーアクションの鼻につく水谷なのである。今、相棒と云うドラマが人気を博しているようだが、たまたまハマったに過ぎない。
それで「幸福」なのだが、これは、銀残し、という特殊な現像処理を施された作品である。全体的にカラー階調が落ち、残った銀が鏤められた感じになるものの、コントラストも高められる、といった、特徴のある映像になっている。今回のDVDも同じような処理をして作った新しいプリントをマスターにしているというが、映画館で見た印象と比べると、ややセピア調が強いのではないかと思う。どの道、フィルムの質感をDVDに再現するのは難しい。
そういった作品なのだが、TVで放映されたのは公開の数年後に一回だけだったのではないかと思う。シルバーカラーではなく、ごく普通の映像になってて、がっかりした記憶がある。それから四半世紀、見ることはなかった。
このプロダクトについてのいろいろなプレビューでは、幻の作品扱いされてて、皆、そう思っていたんだと安心した。
初回限定 特別版 市川崑監督 水谷豊主演「幸福」【ハイブリッド版Blu-ray】 出演: 水谷豊, 永島敏行, 谷啓, 中原理恵, 市原悦子 |
市川の作品でメジャーなのはどうしても金田一シリーズになってしまうのだが、独特の様式美的なところがある。戦後まもなくと云う時代設定が多く、どちらかというとスローな流れになるのだが、その中に急が入り、緩急変化の演出がなんとも絶妙であった。しかし、「幸福」は現代劇であり、テンポも大きく変化はしないのだが、シルバーカラーと云う手法が、全体を引き締める効果を出している。
エド・マクベインの87分署シリーズの「クレアが死んでいる」を原作にしているのだが、社会の底辺で生きている人間を見つめる様は何とも云えない。市川がこの原作をどのように料理したのか気になったので、原作を早速注文した。
もう見ることのない中原理恵は、歳の割には妙に老けているなと思ったり、谷啓や市原悦子はそんなに変っていないので驚かされるし、ロプバートの主題歌「幸福・ロンリー ハート」は昨日聴いたように鮮明に覚えているのはどうしてか、等々、何度も観てもいろいろあって、見飽きない作品である。
このソフトはDVDとブルーレイのハイブリッドディスクなのだが、DVDに関しては何の問題もなく再生できています。
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コメント
O-Maruが監督したの?
投稿: BlogPetのフタキンSkywalker | 2009.11.07 14:32