岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」(99)
岩井志麻子の小説は怖いということで、日本ホラー小説大賞受賞作「ぼっけえ、きょうてえ」を読む。文庫本で40ページほどの中編である。「ぼっけえ、きょうてえ」というのは岩井の出身地である岡山弁で「とても怖い」を意味する。
明治の末期を舞台にした話であり、遊郭の遊女が客に話し聞かせる内容が、そのまま小説となっている。
恐怖話として最後の1/4くらいから、物語が展開するのだが、その展開よりも前半の遊女の生い立ち話の方がインパクトがあり、ショッキングである。中国地方の山間部の生活がいかに過酷なものであるか、また、堕ちるところまで墜ちたものはどのような生活をしているか、驚愕する。小説であり、どこまでそういったことが実際にあったのか判らないのだが、岩井による語りはリアルにそれを再現する。
明治のこの時期と云うのは文明開化の時期ではあるが、昔ながらの非分明なところもまだまだ残っているといったイメージがあり、我々にとっては混沌としたものである。そういったまだ薄暗い世界のなかで悍ましきことが当たり前のように繰り広げられている。
肝心なホラー的なところが展開するやいなや面白味がなくなってしまうと云うのは、ちょっと残念だが、読んでいて本当に目を被いたくなるようなこの救いのない生活を一度は垣間見ておくのも決して悪い事ではないと思う。
ぼっけえ、きょうてえ 岩井 志麻子 (著) |
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コメント
O-Maruが再現するの?
投稿: BlogPetのフタキンSkywalker | 2009.10.17 14:42