ナルシソ・イバニェス・セッラドール『ザ・チャイルド Who Can Kill a Child?』(76)
本格的な映画館通いが始まったのは中学の3年くらいからだったが、それでも小学生に上がった頃からTV放映の映画は極力欠かさずに見ていたものだ。TVで一度見たきりでも心の奥に残って消えないものがある。製作年からして中学になってからTVでみたのだが、ナルシソ・イバニェス・セッラドールの『ザ・チャイルド』は忘れられないものの一本になっていた。
白い建物ばかりの静かな地中海の島をバカンスで訪れた夫妻が悪夢のような出来事に巻き込まれる。物語は非常に単純なのだが、その淡々とした様は異常な程であり、それが30年近く経っても感覚的に残っていた。いわゆる恐怖映画の中にカテゴライズされるような作品なのだが、その類のものと一線を画しているのである。恐怖は暗闇からやってくることが多いのだが、この作品では恐怖は白昼の目映い太陽の下でもたらされるのだ。
タイトルの通り子供にまつわる物語なのだが、TV放映では完全にカットされていたのだが、全編112分のうち冒頭の7分間がアウシュビッツやベトナム戦争で虐げられ殺される子供たちのドキュメント映像で驚かされた。監督がこれほどテーマ性を持たせてこの映画を作ろうとしていたとは想像もしていなかった。
ザ・チャイルド <30周年特別版> 監督: ナルシソ・イバニエス・セラドール |
どうもTV放映は一回あっただけのようで、幻の映画となっていたようだ。01年にDVD化されていたのだが、すでに廃盤になっており、入手できずにいた。今回のリリースでは劇画ロードショウと云われる公開当時、月刊チャンピオンに掲載された映画を漫画化したものが45pまるまる掲載されるなど、資料もかなり充実している。タイトルにピンと来た人は絶対お買い逃しのないように。
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