細江英公『写真集 抱擁』(71)
欲しくて仕方のなかった細江英公の写真集『抱擁』のオリジナルをヤフオクにて入手する。函はかなり傷んでいたが、写真集そのものは綺麗だった。38年も前の書籍になるので、保管の関係かちょいと臭いが酷かった。陰干ししておこう。
装幀も細江本人の手によるもののようだ。印刷はグラビア印刷。現在の印刷のほとんどがオフセット印刷と云う方式をとっており、原版につけたインクをゴムローラーに転写し、そこから紙に印刷すると云う凸版印刷である。グラビア印刷は銅板原版のくぼみにインクを載せ、それでそのまま紙に印刷すると云う凹版印刷方式である。グラビアでは黒が完全な黒になり、再現が明確になる。オフセット印刷物になれているとグラビア印刷はやや違和感を感じるものだが、力強さは全く異なる。
細江英公『展覧会のための写真集・「抱擁」と「薔薇刑」』(08)では掲載された写真はカビネサイズなのだが、こちらは36.5*26cmというサイズの本であり、多くが断ち切り見開きなので、肉体のアップを捉えた映像は、普通に見ていたのでは何がなんだか判らなかったりする。
それにしても人体の躍動美が見事に捉えられて素晴らしい。黒人男性と白人女性かと思っていたら、いずれも日本人で、おのおの2名がモデルになっているようだ。
使用フィルムがトライXということで、非常に懐かしい製品名を20年ぶりに目にした。このフィルムはコダック社のISO400の高感度モノクロフィルムである。やや粒子が荒いのだが、コントラストもしっかりしていて、モノクロ写真を撮ろうと云うのなら避けることは出来ないような存在だった。学生時代はこのフィルムを使って撮影し、自宅で写真現像したものである。増感撮影をし、更にざらついた感じになるように高温長時間フィルム現像するといったような技も使ったものである。そのフィルムを用いて、この写真集はつくられたようだ。
抱擁―細江英公写真集 細江 英公 (著) |
中にチラシが入っていて、オリジナルプリントを頒布するということで、カビネサイズのものが1枚頒価10,000円ということだった。写真集そのものが3,600円。ちなみにこの年の大卒の平均初任給は43,000円らしい。
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