森博嗣『スカイ・クロラ』(01)
案の定、とっとと読み終えてしまった。先に押井の映画化作品を見てから、森博嗣の原作を読んだ。
スカイ・クロラ 森 博嗣 (著) |
感心したのはいつもなら原作を弄んで自分の世界に引きこもってしまう押井が、今回はラストを除いてはほとんどなぞっただけといっていいくらいということである。循環する世界は押井のテーマのひとつであり、それが描かれ森の原作こそ、押井の世界に歩み寄っていたという気もする。
映画化にあたっては押井の『アヴァロン』が好きだったということで、森から押井にオファーしたということらしいのだが、やや希望のない森のエンディングを除いては、押井ワールドであったのかもしれない。
物語は不老不死の少年少女についての話である。彼らはすでにイベントになってしまった企業による戦争に自らの命を終わらせるために、戦闘機乗りとして活躍している。少年少女の姿で不老不死と云うのは変に感じるかもしれないが、よくよく考えると理にかなっている。老いた状態で不老不死と云うのは中途半端に老いている訳であり、理屈的にはおかしい。若さを保ったままだからこそ、結果として永遠を生き長らえるとすれば、それは当然のことだろう。
森の原作は詩的であるが、これだけで完結するとなると救いがない。そういう意味では押井のラストを捻ることにより希望を持たせただけではなく、作品世界にも広がりを加えたというのは見事であろう。
小説としてこれを第一作として、7冊のシリーズになっているようだ。基本的には各々が完結し独立した物語になっているらしいのだか、全体を通して何を訴えようとしていたのか気になる。しかし、この巻を読んだ限りではあたし個人的にはあまりにもとりつくことのできるところがなく、底なし沼に落ち込んだような感じもある。次を読むかどうかは、まぁ、気分だと思う。
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