鬼海弘雄『Asakusa Portraits』(08)とそれ以前
昨年海外で出版された鬼海弘雄の浅草寺境内シリーズの最新写真集はドイツでの印刷だったようだ。この鬼海のライフワークでもある浅草寺境内の肖像写真は87年の『王たちの肖像-浅草寺境内』から始まり、次の4冊が続く。残念ながら処女作品集である『王たちの肖像』はまだ入手できていない。
や・ちまた―王たちの回廊 鬼海 弘雄 (著) 単行本(ソフトカバー): 225ページ |
収録された写真は182枚。鬼海本人とその他の10名のエッセイが挿入される。後の写真集に含まれない写真も多い。紙は厚手の普通紙で印刷は良くない。この肖像写真シリーズは全体の雰囲気も非常に重要だが、ディテールが見事なので勿体ないとしか云いようがない。同時期に撮られた写真が後にも使われているが、後の写真集の方が濃い。
PERSONA 鬼海 弘雄 (著) |
大判の写真集でプリント原寸で印刷を行っているという。フィルム特有の細かい粒子のヌメリとした感触がそのまま再現されている。コントラストのないグラデーション重視の絵はやや眠たくも感じるが、それがかえって生々しく人を記録している。赤い壁の加減が本当に微妙で、よいステージを見つけたものだと思う。掲載は166枚。
久しぶりにページを開くと縁に黄ばみが出ていた。輸送用ダンボールに入れて保管しているのだが、それがダメなのかどうか。5年程度でこうも酸化が進むとは問題である。
ぺるそな 鬼海 弘雄 (著) 単行本: 236ページ |
『PERSONA』の廉価普及版として出版されたもの。『や・ちまた』と違ってちゃんとしたアート紙を使っているものの印刷は『PERSONA』を見ていると辛いものがある。潰れや印刷の網が気になって仕方ない。収録写真は191枚。
Hiroh Kikai: Asakusa Portraits Hiroh Kikai (著), Christopher Phillips (序論) |
『PERSONA』よりひとまわり小さい写真集である。しかし、印刷は『PERSONA』には及ばないものの、かなり丁寧に行われている。この肖像写真シリーズの本当の価値を知るのには、このくらいの印刷レベルは必要である。220枚ほどの写真が掲載され、1割くらいは見たことがないようなもののような気がする。『ぺるそな』と同じ03年までの写真だが、一枚だけ過去の人物の07年写真が掲載されている。『PERSONA』を手に入れることが出来ず、『ぺるそな』を代わりに入手した人にはぜひ手にしてもらいたい一冊である。
2009.3.6 追記
『Asakusa Portraits』のページのサンブルを。
画像をクリックすると大きな画像を表示するのだが、それでもキャプションのつけられ方は判り難いかもしれない。キャプションは"英語キャプション,撮影年"となっており、左ページは左寄せ、右ページは右寄せで、各々の写真の下に添えられている。左が普通のページで、右は例外的な組写真となった女装もする「製本工をしているというひと」のページである。キャプションは日本語版をそのまま英語訳したものとは限らないようだ。
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コメント
はじめまして
以前TBSの情熱大陸を見た際 被写体に衝撃を受けて
書店に飛んで行き、生まれて初めて写真集なるものを買いました
「PERSONA」をひらくと何年経っても思わず見入ってしまいます
「ぺるそな」も買いましたが 写真のサイズ故か
余り心が動かされなかったです
良く行くリゾートホテルのライブラリーに置いておきたいのですが
「Asakusa Portraits」のページごとのレイアウト、キャプションはどのようになっていますか?
出来たら1枚でもサンプルを拝見したいです
投稿: pon | 2009.03.06 17:35
ponさん、こんにちは。
とりあえずページのサンプルを記事に追記して置きました。
スキャンできるような代物ではないので、
デジカメによる撮影なのですが、詳細は判りづらくご免なさい。
何れにせよ、見ての通り、日本語版と同じような感じの構成で、
そんなに違和感のあるものではありません。
それにしてもこの浅草ポートレイトシリーズは惹いて止まないものですね。
投稿: O-Maru | 2009.03.06 21:38
早速 中のページの写真のアップロード ありがとうございました
personaの雰囲気と余り変わらず、クラブラウンジのライブラリーの蔵書として置くには 英語版のこちらの方がよさそうですね。
自宅にはpersonaを保存版として置く為に
『Asakusa Portraits』、amazonでポチッとしてしまいました
投稿: pon | 2009.03.08 17:28