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2008.10.22

ディテール・ディテール・ディテール/『屍鬼』

 今月の初めの頃から読んでいるのが小野不由美の『屍鬼(しき)』という小説である。10年前に発表された長編の書き下ろしで上巻545ページ、下巻726ページ、しかも上下2段組みであるから、かなりの長編である。後から発売された文庫本版は5巻に分れている。

屍鬼〈上〉
屍鬼〈上〉

小野 不由美 (著)
単行本: 545ページ
出版社: 新潮社
ISBN-10: 4103970022
ISBN-13: 978-4103970026
発売日: 1998/09

(表紙を拡大)

 物語は外場村という山村を舞台とする。外場という名称は村の産業である卒塔婆作りから来ている。現在ではまわりの町と合併して村ではなくなってしまっているが、地形的な条件もあり、人口1300人の閉鎖的な生活は依然と変りがない。そこで次々と人が不可解な病死をする。

 というのが、現在300ページ余りを読んでの話である。

 とにかく初めの200ページ程はこれといった出来事もなく淡々と村の様子が描かれるのだが、その緻密さが感心するほどである。ウィキペディアでは登場人物が網羅されており、100数十名が登場するのだが、そのほとんどがここで既に描かれているはずである。閉鎖的な因習に縛られた村の様子が如実に描かれる。またしきたりは歴史を踏まえたもので、そのあたりも詳細に説かれる。こういった描写はおそらく完全な架空のものではなく、どこかのものを参考にしている筈である。風俗的なこともかなり研究されての著述であろう。やや冗{くど}いという気もしないでもないが、説得力があり、安心して読み進めることができる。

 最近、女性作家による作品としてこんなのこんなのを読んでいたので、そのアマさにうんざりしていたのだが、『屍鬼』は十分に読み応えのあるものだ。しかし、このディテールにこだわる様はいかにも女性らしいとも云える。男なら緻密に構築しながらも観念的・抽象的なところがどうしても出てくるのだが、この作品では事実のみが感心するほどに細かく積み上げられる。

 最近、就寝がはやくなり読書量もとんと落ちてしまったので日に読み進めるのは10ページそこいらという情けない状態になってしまったものの、読むのを中断しようとは思わない上手い小説である。読み終えるのにもうひと月は間違いなくかかろうかと思われるが、存分に楽しませて貰おうと思っている。

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