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2008.09.02

加門七海『祝山』(07)

 加門七海の体験談語り下ろしは非常に面白い。いろいろな体験をしているからなのは当然、女性的なディテールの掴みがすばらしくそれは見事に臨場感をかきたてるのだ。一方、フィクションとなると物語としての構成が弱くて、特に人間描写においてすぐに破綻してしまう。普通の小説なら性格づけした登場人物が勝手に物語をつむいでくれ、統一感が生まれ易いが、恐怖ものはあくまでもストーリーが先行するので、それにあわせて人物が動くことになる。これは随分と力量がいる。

 今回の『祝山』は実際の体験を基にしたフィクションである。

 実際の恐怖体験に起承転結があることは、まぁ、ない。と考えるのが普通だろう。怖い体験に完全な脈絡はないのだけども、不可解な出来事は存在する。それがリアルに表現されれば、結末が明確でなくとも、読み手はそれなりに愉しむことができる。この小説はそんな小説である。

祝山
祝山

加門 七海 (著)
文庫: 245ページ
出版社: 光文社
ISBN-10: 4334743056
ISBN-13: 978-4334743055
発売日: 2007/9/6
商品の寸法: 14.7x10.9x1.5cm

(表紙を拡大)

 ベースとなったのは語り下ろしの『怪談徒然草』の「後味の悪い話」という夜の神社に肝試しをして遭遇してしまったヤバい体験である。10ページほどの話が一冊の長編(中編?)に膨らませ、『祝山』となった。『怪談徒然草』は印象深い体験が多いのだが、特に怖いと云う訳でもないのだがこの「後味の悪い話」は鮮明に記憶に残るものである。小説にする時は別のところにポイントを置き直し、直接膨らませたものではなくなっているが、同じような引っかかりを残す。

 話としては面白く一日あれば十分に読み終えることができる。しかし、相も変らず改行が多い。1、2文で改行してしまうというのは小説としては異常であり、読み手としても息つぎばかりを強制されるようで、正直かなり読み辛い。著者はもしかすると散文を書いているという雰囲気なのかも知れない。おそらく普通の改行で書くとページは2/3以下になるに違いない。


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