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2008.08.01

小池真理子『墓地を見おろす家』(88)

 文字によって恐怖をもたらせるというのはなかなか難しい。嫌悪感を与えるのは比較的簡単だが、恐怖は技術が必要である。

 これまで読んだ小説で怖いと思ったのは小松左京の『くだんの母』と筒井康隆の『母子像』である。くだんに関しては神戸で実際に何度となく見られた牛人間をモチーフにしたものだが、そういったことを知らなくても、描かれるイメージが鮮明で恐怖が形作られる。さらに筒井の『母子像』はそれが顕著であり、ただただイメージして目の前に繰り広げられる静かなあの世とこの世の半透明な境界に恐怖してしまうのである。

 恐怖とは理屈ではなく、むしろイメージの中にあるのではないかと思う。そういう意味では長編ホラーは恐怖を描くのは非常に難しく、短編に勝れたものが多くなってしまう。

墓地を見おろす家
墓地を見おろす家

小池 真理子 (著)
文庫: 330ページ
出版社: 角川書店; 改訂版版 (1993/12)
ISBN-10: 4041494117
ISBN-13: 978-4041494110
商品の寸法: 14.8x10.6x1.6cm

(表紙を拡大する)

 やたらと評判がよく、それで読んでみた小池真理子の『墓地を見おろす家』だったが、大風呂敷を広げた割にはどうでもいいようなエンディングに持ち込んでしまったような気がする。理屈的なものを持ち込むのであれば、それなりに説明をつけておくべきだったのではないかと思う。まぁ、そうすると白けたことにもなりかねないし、こういううやむやにするのがやはり賢明なのかもしれないが、そうすると中盤、理屈的なところを持ち出し過ぎたということになる。

 期待して読まなければそこそこ楽しめると思うが、間違って期待して読むと間違いなく×。

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