ルッジェロ・デオダート『食人族』(79)
もともとはと云えば、あたしはB級映画ファンである。高校時代に観た『食人族』もなかなか良かった。なぜか知らないがこの映画のことを久しぶりに思い出してしまって、廃盤中古を定価で買ってしまうことになる。
食人族 アルティメット・コレクション 監督: ルッジェロ・デオダート |
残酷な映画と云うとイタリアのヤコペッティが有名どころだが、その特徴と云うとドキュメンタリ(風)であるというところにある。彼の作品は一見、ドキュメンタリなのだが、どこまでがヤラセでないのか判断がつかない。現実と虚構を行き来する中で、見せつけられる残虐さはより現実味を帯びて見える。見事なレトリックである。
そんなイタリア映画の系列にあるのがこの『食人族』でもある。未開地で死んだ4人の撮影クルーのフィルムを現地で発見し、現像してみると...というのがこの映画の物語なのだが、ドキュメンタリタッチの中で残酷さが展開される。確かに原住民の姿はほんものかと見間違うほどのもので、作りは凝りに凝っている。殺害等のシーンも多くは実にリアリティに富んでいる。二番煎じは難しい手法だが、これは成功したくちではないかと思う。
この映画の音楽なのだが、ヤコペッティの『世界残酷物語』(62)や『さらばアフリカ』(66)も担当しているリズ・オルトラーニによるものであるということを初めて知った。『世界残酷物語』の主題歌「モア」は大ヒットしたものだが、確に『食人族』のオープニングテーマものどかな美しい曲である。しかし、初めてシンセサイザーを用いたということで、ボヨヨンボヨヨンと緊張感のあるようなないような音楽が肝心なシーンで流れるのには参った。
ちなみに劇場公開当時、何を考えてか、うちの母親が張り切ってひとりで観に行ったのだが、気分が悪くなったと途中で出てきてしまったようだ。行くんじゃなかったと、後悔頻りな様子が可笑しかった。
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