坂本龍一『トニー滝谷』(07)
05年の市川準監督の『トニー滝谷』の音楽は坂本龍一が担当していたのだが、そのサントラが昨年末にようやくリリースされた。
トニー滝谷 坂本龍一 |
坂本の音楽は決して悪くないのだが、いいかげんメロディアスなところにうんざりしてきて、もうしばらく関心の対象になっていなかった。音楽はメロディだけではないということが、彼の音楽を聴いているとよく判る。音楽作品の好き嫌いはもっと別のところにあるようだ。
それにしても映画『トニー滝谷』は映像と音楽が見事に融合した作品で、おそらく坂本の音楽でなければその価値は半減していたに違いない。これは坂本すべての才能によるものかというとそうではないと思う。市川の坂本を起用したこと、そうして『「無くてもよかったような」音楽を作って欲しい』という注文は見事に的を中てていたと云えよう。
孤独な男を描いた作品なので、とにかく音楽も美しいながらも冷たい。いくつかのフレーズはあるものの、メロディーというよりかは音の積み重ねといったような音楽である。映画を見た時に映像に見事に重なった音楽だったのでどうしても映像が浮かんでしまう。映画を観ていない人がこの音楽にどのようなイメージを受けるのか非常に興味深い。映画を観ているのとみていないとのでは音楽の捉え方が随分と変る筈だ。
このサントラを聴きながら車を転がすと周りの景色がいつもの景色と変ってしまった。凍りついたような風景に様変わりしてしまった。車を運転する時にかけるような音楽ではないだろう。
アルバムのケースは紙製でとても変っている。CDで紙ジャケット仕様なんていうのが特別仕様で出されていたりするが、もっと凝っている。それにしてもジャケットの裏にあたる写真が問題。嫌いな人じゃないが、イッセーになんか横たわってシナを作って欲しくない。さらに何故だが顔が怖かったりする。メークに一工夫して欲しかった。
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