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2008.02.04

本田靖春『不当逮捕』(83)

 ブックオフで100円で買ったものだが、なにか取っ付きが悪く、5年くらい放置していた。久々に手に取ると、これがこれが恐ろしく面白く、ドキュメンタリとしては上級の部類に入るのではないかと思う。

不当逮捕
不当逮捕

本田 靖春 (著)
文庫: 433ページ
出版社: 岩波書店 (2000/03)
ISBN-10: 400603010X
ISBN-13: 978-4006030100
商品の寸法: 14.6 x 10.4 x 2.4 cm

 読売新聞社会部の名物記者・立松和博は赤線廃止に伴う疑獄事件報道について名誉毀損で逮捕される。情報源の秘匿がその逮捕の理由だったが、検察の内部対立がそれを必至としていた。

 昭和30年代初めの頃のことで、登場する人たちは平均化されてしまった我々の理解を超えた者ばかりである。貧富の差がまだ大きく、特に富めるものは格段だったのかも知れない。記者立松にしても裕福な家庭に生まれ、奔放に記者生活を送っている。描かれる様子は理解を完全に超えてしまっており、もし周りにそう云う人物がいたとするとどんなだろうかと想像するのさえ、困難を極める。

 検察の派閥争いもし烈を極めている。こういった争いは今でも健在かも知れない。省庁の事務次官が天皇扱いされているなどと云う報道を見聞きすると、そんなに変っていないような気がする。地位を求める人間はいなくならないのかも知れない。

 とにかくあの時代を絶妙に捉えた作品ではないかと思う。戦後の空気を知るにはフィクションではあるものの筒井の『新日本探偵社報告書控』とともに非常に優れている。

 本田靖春の作品についてはちょっとばかり読み漁ってみようと思う。

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