エドワード・ゴーリー『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』(63)
またヘンなものを見つけてしまった。ネットは本当に罪深い。それでとりあえず入手したのが、『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』。
ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで エドワード ゴーリー(著), 柴田 元幸(翻訳) |
エドワード・ゴーリーと云う絵本作家で、日本でこの初の翻訳本が2000年10月に出される少し前の4月15日(この日ってのはあたしの35の誕生日なんだが)に心臓発作で75歳で亡くなっている。
作品のタイトルからすると「または遠出のあとで」というフレーズがあり、行楽の後のなんとはなくほのぼのしたような印象を受けるのだが、そんな内容ではない。すべてのページが同じ構成になっており、例えば最初の見開きでは、左のページが「A is for AMY who fell down the stairs」というオリジナルの英文が載せられ、右のページにはエイミーとおぼしき女の子が階段の上で宙を舞っているペン画とその下に「Aはエイミー かいだんおちた」という柴田元幸による翻訳が添えられる。そういう感じでAからZまで、26人のおのおののアルファベットの頭文字の名前を持つ子供たちの死に行く様が描かれるのだ。
表紙はこれから死ぬ26人の子供たちと、そうして死神なのだろうか、そんな感じのものが描かれるが、さらに裏表紙ではおそらく26あるんだろうが墓標が描かれている。本当に芸が細かい。内容として、階段から落ちるのを始め、まさかりで切り殺されたり、焼け死んだり、鼠に食われたり、爆死など、惨いものやそんなに惨くないものまで本当に多彩な方法で子供が死ぬ直前やその瞬間、そして死んだ様子が描かれる。
まぁ、惨い絵本なので、彼の絵本というのはおとなの絵本と呼ばれるようなのだが、実際に子供が見てどのように思うのだろうかということはあるのだが、印象としてはそんなに後味が悪くはない。残酷さに関心を持ち、それに重きをおいて描かれているかどうかというところで、そうではないと云う判断を下しているんだろうと思う。死の様子を描いているのだからおぞましい印象がほんとうはあるはずなんだけども、そのあたりが完全に欠如している。ただの出来事の一つとして死が描かれると云う感じである。方向的には昔話の惨さ、おぞましさに非常に近い。
何がともあれ彼の作品がキワモノであると云うことには間違いない。しかし、ゴーリーのほんとうの作風、そして、そこに至った理由が知りたく、この人とはしばらくお付き合いをしてみようと思っている。
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コメント
はじめまして。
たまたま、こちらにたどり着きました。
ゴーリーの絵本、購入されたのですね。私は怖くて手元に置くことが出来ないままです。
この絵本の動画を見つけて、自分のブログにも貼りました。ブログなら物理的に存在していないので大丈夫かと思って・・・。
ゴーリーについては、他の絵本のあとがきにもそれぞれそのひととなりの記載があるようです。
ちなみに、私が一番怖いのは「おぞましいふたり」です。
投稿: あのじ | 2009.02.27 21:06
あのじさん、初めまして。
あのじさんのところで動画があるというのを初めて知りました。
ひととおり見たのですが、やはりテイストは異なりますね。
残虐さ、コミカルさが浮きだってしまって、奥行きがない感じです。
怖いと云えば確かに怖いんですが、この絵本に関して云えば、
愛[いと]おしさのようなものも感じます。
「おぞましい二人」については実際にあった事件をもとにしていて、
ゴーリー自身の嫌悪のようなものも含まれていて、
趣きは大分違っているような気がします。
確かにこの本が一番怖いです。
投稿: O-Maru | 2009.02.27 22:39