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2008.01.02

大田洋子「大田洋子集 第ニ巻 人間襤褸」(82)

 大田洋子集全4巻がオークションに出品されていたので、落札した。この全集は82年に三一書房から出され絶版となった。復刻版が日本図書センターから出版されているが、価格も結構なものでなかなか手が出なかった。すでに三一書房版を第一巻のみ入手済みだったが、全巻で8,000円(送料別)と廉価の出品で迷わず入札し、落札した。届いたいずれの巻も函の背が多少傷んでいる程度で、中は一度も読まれたことのないかのような美品だった。

大田洋子集 第ニ巻 人間襤褸
大田洋子集 第ニ巻 人間襤褸

大田 洋子(著)
単行本: 357ページ
出版社: 日本図書センター
ISBN-10: 482057924X
ISBN-13: 978-4820579243
発売日: 2001/11
商品の寸法: 22x15.8x2.8cm

(表紙を拡大)

 原爆当日から翌年までのある一家に纏わる人物たちの物語が『人間襤褸』である。襤褸は"らんる"と読む。ボロ布のようになった人間ということだろうか。被爆当時の描写は井伏鱒二の『黒い雨』やそのベースにもなっている『重松日記』と比べると遥かに生々しいものである。被爆者でもある大田洋子が罹災の様子を初めて描いた『屍の街』とはかなり様相が変わってきている。ルポタージュ風に当日のことを一人称的に描いてきたものが、原爆に纏わる人間模様というものに移行している。

 この小説の後半では原爆による悲劇を描きつつも意図してか意図せずそうなってしまったのか男女の話がメインとなる。中には大田洋子の投影と思われるような女性の心理も詳細に描かれ、第一巻で読み知った著者の神経の複雑さを再度思い知ることになる。こういった複雑怪奇な女性心理を小説で読むというのは初めてのことのような気がする。原爆に対することより、自らを制御できない女性のことが気になって仕方のないようになってしまう。

 『人間襤褸』は300ページ弱の作品なのだが2日間で一気に読み終えてしまった。語り口もうまく、読むのは簡単なのだが、多くの要素が絡まり咀嚼の非常に難しい作品でもある。

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