作品の冒涜-
【初回限定生産】スタンリー・キューブリック コレクション
キューブリックはタルコフスキーに次いであたしの好きな映画監督である。そんなキューブリックの5作品とその映像特典をセットにしたコレクションBOXが発売されるというので購入した。
【初回限定生産】 スタンリー・キューブリック コレクション ディスク枚数: 10 『2001年宇宙の旅』・『時計じかけのオレンジ』 |
さっそくこの中でも特に好きな作品である『フルメタル・ジャケット』を観てみる。
いやぁ、酷いのひと言。この作品はもともと画面比率が1.33:1のやや正方形に近いスタンダードサイズで撮られたてるのだが、今回のシリーズでは16:9の横長のビスタサイズに変更されている。このワイド化が売りのようである。当然、横長にするためには何らかの処理をしなくてはならず、画面を横長に引き伸ばすなんていうのは論外なので、上下を切ることによって横長化を実現している。キューブリックはすでに故人であり、第三者が作品に勝手な手を加えることになる。
キューブリックというとフォトカメラマン出身の映画監督であり、シンメトリー(左右対称)な構図を効果的に利用するなど、映像に非常に重きを置いた作家である。横長のシネマスコープはごく一部の作品で用いただけで、ビスタサイズが一般的になっている中、ほとんどの作品をスタンダードサイズで撮っている。これは監督の映像へのこだわりの結果である。
上下をトリミングした今回の商品を観て、なんてちんけなものを作ったんだろうかと驚いてしまった。奥行きのある構図が上下を切り取られることで、中途半端な具合になってしまっているのだ。これはあまりにも酷い。トリミングをしたものだけを見た場合、もしかするとそんなに変に感じないかもしれないが、スタンダードサイズのオリジナルと比較しながら観てみると、とてもではないが観られたものではない。こんな風にトリミング作業をした技師というのはそれをやっていて心苦しくはなかったのだろうかと思う。
ワイド化というのは一応知っていたが、これほどひどくなるとは思っていなかった。特典のためだけにこのセットを入手してしまったことになる。作品を愛していない人間がリリースをしたのだというのが一目了然である。
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