天野可淡『KATAN DOLL THE BOX』
今回、目についてしまったのは天野可淡という人の人形写真集。天野可淡の作る人形は、作者の名前からカタンドール KATAN DOLLと呼ばれているようだ。手足の関節を動かせる球体人形なのだが、その様相が非常に妖しい。美しいとか美しくないとかというくくりではなく、この世とあの世を行き交っているような印象さえ与える。可淡は17年前、バイク事故により37歳ですでに故人となっている。作品集としては吉田良一による撮影で生前には89年「KATAN DOLL」、90年「KATAN DOLL fantasm」、死後に92年「KATAN DOLL RETROSPECTIVE」が出ていたが、いずれも絶版状態となっていた。
まず、復刊となったのは「KATAN DOLL」と「KATAN DOLL fantasm」。この2冊については単独でリリースされる通常装丁版と2冊をセットにし、豪華化粧箱入、特別豪華装丁にした『KATAN DOLL THE BOX』が出た。掲載される写真についてはオリジナルの写真の紛失などから全く同じではないらしいが、版が大きくなっているようだ。
単品で出ているものは一冊が各2,940円する。両方揃えようとすると6,000円程の支出となる。一方、2冊セットで豪華装丁の『KATAN DOLL THE BOX』は8,400円であり、装丁費用として2,500円ほどが上乗せになっていると考えればいい。物見高いあたしは2,500円の装丁費用がどの程度のものか試してみることにした。
届いたの厚さ3.5cm程の函が薄紙に包まれ、ビニール袋に入っていた。それがさらに2重でクッション緩衝材で包まれて箱づめで送られてきていた。豪華化粧箱は厚みのある高級函である。函は左右同じ大きさなのだが、中に入っている書籍より寸が短いため、函受けが中央で露出し、アクセントとなっている。黒とこげ茶のダイアを敷き詰めらた柄の函の化粧用紙は、コーディング加工をされておらず、シックである。もちろん表題は金箔押しである。この手の函は非常に高く、役場の仕事で設計委託を行った際、成果品を収める函が必要になるのだが、それを作ってもらうだけで1万円は軽く必要だった。
本自体はベルベット装。ベルベット装といっても部分的にベルベットを貼り付けているのだが、よく見ると、ベルベット貼り付け処理をした後に見返し紙に折り込むといった処理がなされ、簡単な製本でもなさそうである。植毛のベルベットの上にタイトルが金箔押しされているので、擦ると金箔が落ちてしまいかねない。何れにせよ、普段は見ることのできない高級装丁なので、一度手にするのに2,500円を支出するような価値は十分にあるのではないかと思う。
『KATAN DOLL THE BOX』については、出版元のエディシオン・トレヴィルでも品切になっているし、復刊ドットコムでも急いだ方がいいだろう。
KATAN DOLL/カタンドール 天野 可淡 (著), 吉田 良 (写真) |
KATAN DOLL fantasm ―天野可淡人形作品集 天野 可淡 (著), 吉田 良 (写真) |
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