漂流教室
楳図かずおの楳図パーフェクションシリーズの『漂流教室 1』を読む。もともと少年サンデーコミックス全11巻あったものを3巻ものに再編集し直したもので、パーフェクションの第1巻ではオリジナルの4巻半ばまでが収録されている。
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漂流教室 1
楳図 かずお (著) |
3時間あれば十分に読み終える量なのだが、とにかく盛沢山。人間の良いところ悪いところ、散々見せつけられてしまいます。楳図の作品の凄いところはものごとを中途半端に描くということはなく、とことんまで見せつけるというところにある。カタルシスの極めである。以前の作品と比べて絵の書き込みも細かく、力を注いでいるということも一目了然。この1巻でお腹一杯という状態なのにさらに倍の量が待っていると思うと気が遠くなる。
漂流教室といえば、以前にTVドラマ化されている。大林も映画にしていたがこれは完全に論外で、特に言及する必要もない。常盤・窪塚主演のTVドラマ『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』(02)はそれなりに面白く、放映当時、残業がない限りは観ていたように思う。調べてみるとニコニコ動画に全編アップされていた。明らかに著作権無視の違法行為なのだけども、3日ほどで全話見てしまう。
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ロング・ラブレター ~漂流教室~ DVD-BOX
出演: 常盤貴子, 窪塚洋介, 山下智久 |
原作者の楳図かずおには不評だったが、あたしはそれなりに面白く見ることが出来た。楳図作品は原作というより原案と見るべきである。アイディアを取ってまったくオリジナルのドラマを作ったと考えると悪い作品であるとは云えない。楳図の作品は極限を描いたグロテスクなものだが、やはりお茶の間には相応しくないだろう。常盤と窪塚の恋愛を下地(実はこれがメインか?)にドラマをおいたのは必ずしも誤った判断であるとは思わない。それで独立したものであれば、基本的に問題はないのだ。ただし、楳図としては『漂流教室』は様々なテーマを真剣に盛り込んだ作品であったらしく(詳細は「楳図かずおのラジオ984 第14回」を参照)、その多くをスポイルされたことに対する憤りを感じるのも無理はないことだと思う。
原作ものの映像化の失敗というのは、原作に捕らわれ過ぎ、映像化した作品が独自性を失い中途半端になってしまうこと。映像化においては原作を取り残してしまって走り去るくらいなのが、一番な無難じゃないかと思う。キューブリックの『シャイニング』もそういった例のひとつである。
装丁者が今ひとつなものの、とにかくしばらくは楳図の『漂流教室』の毎月末リリースを楽しみにして過そう。
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