テレンス・マリック『地獄の逃避行 Badlands』(74)
昨日から上の子にハリー・ポッターシリーズの『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』が観たいとせがまれていた。DVDを買ってくれと直接云わないが、何時になったらTV放映されると思う?とか頻りに尋ねてくる。あたしも映画DVDは気になるものはたいてい買い込んでいるし、そういう訳で子供の要望も無視する訳にはいかない。ハリー・ポッターシリーズはどちらかというと苦手な部類に入り、上の子のためにこれまでのものは買い揃えてはいるものの、映画館ではもちろんのこと、家にあるDVDも通して観たことはない。
ハリー・ポッターと炎のゴブレット 監督: マイク・ニューウェル |
ヤマダ電機のポイントカードを1年近く使っておらず、今月半ばまで放置していると溜ったポイントが無効になってしまうはずで、さっそくポイント消化のためにも『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を買いに行く。
DVDの棚を眺めていて目についたのが、『地獄の逃避行』。これがなんとも云えぬ作品なのである。
少女と流れ者の青年が恋に落ちるが、少女と二人暮しの父親はそれに激しく反対する。青年は父親を射殺する。青年と少女は間違いなく現れるだろう追っ手から逃れるための逃避行を始める。いく先々の人々や追っ手をこともなく射殺する青年。何の希望も持たずただただ逃避行を続けるふたり。
地獄の逃避行 監督: テレンス・マリック |
1958年にネブラスカ州で起こった事件を基にしているらしいが、『地獄の逃避行』という邦題はいかがなものかという感じだ。原題のBadlandsは、舞台にもなっている荒野・不毛地帯のことである。主演のシーンがこの少し後に『地獄の黙示録』に出演しているということでこの邦題が用いられたと云う。日本劇場未公開作品でもある。
数年後に『カサンドラ・クロス』と『キャリー』の出演が控えているマーチン・シーンとシシー・スペイセクによる主演だがふたりとも本当に若々しい。スペイセクはすでに24歳になっているものの、設定では15歳。それでもまったく違和感がない。『キャリー』は27歳で17歳を演じているのだから、おかしくはないのだが、本当に風変わりな女優である。顔じゅうソバカスで決して美人ではないのだが、どこかそそるものがあるのだ。幼く見えることにも何かあるのかもしれない。『キャリー』と同じ魅力がこの作品にもある。
『地獄の黙示録』が成功した理由のひとつは主演のシーンが表情に乏しい俳優だからではなかったのかと思っている。台詞もやや不明瞭なところのあるこの俳優は、笑顔や泣き顔というのはあまり似合わない。やや強ばった無表情が似合っている。たびたび銃が撃たれ、人間が倒れていくのだが、何の表情も変らない。銃は打つために存在し、だからそうしているだけ、そんな感じだ。何の悪意もない。
のどかな音楽。この作品を観たのはすでに5、6年前とは云わなくなっているが、何故だか鮮明に覚えている。どこかで流れているのを聴いていのだろうか。エンドクレジットに入る前のシーンやエンドクレジットの音楽は絶対に知っている曲である。
美しい光景の中に悪意なき刹那さに溢れ、そのギャップが何ともいえない。何が彼をこのようにしたのかという社会的問題が延長にあるのだろうが、それよりもまずは感触を愉しみたい。
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