秋吉美也子『横から見た原爆投下作戦』(06)
実体験の空襲話からいきなり始まるものだから年寄りの回想話?なんて感じがしたものの、そんなに生易しい書籍ではなかった。この著者の本業はなんだろうかと気になって仕方ない。
横から見た原爆投下作戦 秋吉 美也子 (著) |
現在、久間防衛大臣の「原爆はしょうがない」という発言が問題になっているが、この書籍を読むと「しょうがない」では済まされないと思う。
原爆投下において、米国は最大限の効果を導くためにあらゆる手段を用いていた。日本の各地が空襲を受け、焦土となったが、その際にビラが多く撒かれたのだが、これらは原爆投下を成功させるため、日本国民を欺くための方法のひとつだった。決して文面通りの降服を勧めるためのものではなかったのだ。米国には物量的には完全に負けていたが、効率的に敵を叩くと云う科学的な企てとカミカゼには雲泥の差がある。
広島の次に長崎に原爆が投下されるのだが、本来の目標は小倉だった。北九州ではこれまでのパターンの裏を読んでいち早く次の標的になっていることを察し、原爆投下機を高射砲で一斉射撃をかけ、さらには迎撃のための戦闘機も飛ばしている。そしてさらにある決定的な方法を用いて、原爆機に原爆投下を諦めさせた。
資料の収集が凄まじく、こと細かく詳細が説明される。完全に内容を理解しようとするとなかなか難しい。しかし、米国の悪魔の知恵に気づき、成果のある対応を試みた日本人がいたということは明らかで誇らく感じた。
「原爆はしょうがない」 はなから最大の効果を出すことを目的とし、実験のために2つの街を消滅させたことは本当にしょうがないのか。また、その後、10年近くに渡って内外に自らの残虐さを明らかにさせないため、強力なプレスコードを敷き、治療をまったく施さず、ただただ被爆者をサンプルとしてデータを集めただけの米国の態度を「しょうがない」で済ませることが出来るのか?
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