『医師たちのヒロシマ―原爆災害調査の記録』(91)
昨日紹介した柳田邦男の『空白の天気図』に出てくる枕崎台風で遭難した京大物理学研究室をメインに結成された京都大学原子爆弾災害綜合研究調査班の参加者や遺族らの手記等による著書。
医師たちのヒロシマ―原爆災害調査の記録 核戦争防止・核兵器廃絶を訴える京都医師の会「医師たちのヒロシマ」刊行委員会 (著) |
これを読むといかに柳田の取材が詳細なものだったのかがよく判る。遭難の始終については柳田の描写の方が全体を知ることになるだろう。
それ以外に初めて知ることなったのが、GHQの検閲の厳しさである。GHQは原爆のむごたらしさを世界に知られないようにするため、原爆症の診療に関する情報をすべて発表してはならぬという厳しい制限をかけたようだ。医療とは情報の積み重ねによって発展するものであるが、こういった制約あったため、原爆症にかかる医療はなかなか発展を見ることができなかった。日本で原爆障害について自由に学会でやりとりできるようになったのは1952年になってからのことだった。
思わず米国のやり方に憤りを感じた。ABCC(原爆傷害調査委員会)はしこたま被爆者の検査は行うものの、一切の治療は行わなかった。日本人は完全にモルモット扱いされたのである。しかも、自らが研究を行い、新しい医療を試みようとしても事実上すべて阻害してきていたのである。改めて戦勝国のえげつなさを知ることにもなった。
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