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2007.03.24

アレクサンドル・ソクーロフ『太陽 The Sun』(05)

 イッセー尾形が多少なりとも気になっている人間にはやはり見逃すことのできない1本。

 終戦前後の天皇ヒロヒトを描いた作品。監督のクソーロフは天皇について「彼は、あらゆる屈辱を引き受け、苦々しい治療薬をすべて飲み込むことを選んだのだ。」と語る。日本人にとっては国の象徴である天皇を描くことは暗黙のうちに禁じられたものであり、この映画の批評として「どうしてロシア人に...」というのを見かけたが、それはやむを得ないことと思われる。すでに現人神ではなくなって久しいが、それでも畏れ多い存在であることには違いない。

太陽
太陽

監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形, ロバート・ドーソン
   桃井かおり, 佐野史郎, 田村泰二郎

 一般的にこの映画でのイッセーの評価は高い。ヒロヒトの生写しのようだと云う人も少なからずいる。カミさんはチラシのイッセーの姿を見て、これってドキュメンタリなの?と云ったくらいである。しかし、あたしはそこまで凄いとは思わなかった。ヒロヒトというと皇室アルバムとかの番組で年老いてからの姿はよく目にしていたが、やはり印象深いのは終戦を告げる「終戦詔書」を音読放送した玉音放送である。あの独特の抑揚は他に例を見ない。「あ、そう」という了解の言葉とも単なる相槌ともともとれるものが彼を象徴するのではなく、あの声にある。

 一人芝居に長け、人間描写の神であるイッセーだが、2時間弱の作品を通してヒロヒトを演じるのはやはり荷が重かった。先も云ったようにあたしのヒロヒトの印象というのは声の中に生きていて、それがかけ離れているとやはり辛い。とはいえ、イッセー以外にこのレベルまで演じられる人間がいるかどうかとなるとこれまた疑問で、やはりベストであったのかも知れない。しかし、ところどころいつもの一人芝居の様相も垣間見られて、茶目っけで崩しているのか、もともとそういう演出なのか混乱してしまうところがある。

 独特の作風であり、前半の淡々としたあたりは怪奇映画か何かを見ているような気にすらなってしまった。史実に完全に基づいていると考えるのも落し穴がありそうだが、クソーロフのヒロヒトに対する印象としてあくまでもフィクションとして見ると随分楽しめるのではないかと思う。

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