薬師丸ひろ子『"Wの悲劇"より-Woman』(84)
日本映画専門チャンネルを見ていると澤井信一郎の『Wの悲劇』をやっていた。20年ぶり近くで観る。この映画がかかっていたのはあたしが大学1年生の時。20数年助監督をつとめ、『野菊の墓』(81)に序での『Wの悲劇』は"薬師丸ひろ子の"というより"澤井信一郎の"と冠したい作品である。そうしてデビュー作の評判は散々だったが、この2作目ではまずまずの評判を得た。
あたしの当時属していた映研の機関誌では部員による年間ベストでは『チンピラ』に次いで2位となっている。あたしの投票では5位までしか順位づけしておらず、その中には入っていない。原作の『Wの悲劇』は劇中劇であり、そういった使い方ものあるのかと驚いたものだが、特には評価しなかったようだ。
Wの悲劇 監督:澤井信一郎 |
あらためて見直ししても、手堅く作っていると思っても特に良い作品とは思えなかった。今ではバラエティーでは欠かせない存在になりつつある高木美保がクレジットに"新人"と記された通り、初の映画出演し、やや堅い演技を見せていた。高木についてはあれから遥かによいオンナになったが、薬師丸ひろ子はどうだろう。そうして当時、どうしてそんなに売れたのが不思議になる。不美人が良かったのだろうか? 少女の頃と大人になってからとは必ずしもお互いが延長には存在できないことを思い知らされてしまう。何れにせよ、真面目だがどこか間が抜けている、というのが、久しぶりに見たこの作品の全体の印象だ。
(ジャケットを拡大) |
このメインテーマはすばらしいの一言に尽きる。一応、薬師丸が歌を歌っているのだが、歌詞を聞き取ることがまったく出来ないのだ。あたしにとっての音楽は歌詞のないインストルメンタルが基本であるが、歌詞の意味が判らないものであればその歌声も音楽の一部ということになってしまう。音楽は言葉による主張を持たないで純然たる音の連なりであって欲しいというのがあたしの願いだ。薬師丸の歌というのは不思議なことに日本語で歌っているはずなのに言葉としての何かがまったく見えてこないのだ。言葉として聞き取れず、音階を辿っているだけのような感じであたしには入ってくる。本人にとってそれは不本意なのかどうなのか判らないが、あたしにはもの凄い才能のような気がする。
すっかりバイプレーヤーになってしまったような感のある薬師丸だが、それでも役者を続けることには意味があると思う。メインを演じるだけが役者の存在感を示すことにはならないからだ。
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