『NHKスペシャル 長崎 よみがえる原爆写真』(95)
もしかすると写真家は「その写真に写っているものがすべてだ」という言い方をするかもしれないが、長崎で山端の撮ったものは、撮られた彼らにとってはほんの始まりにしか過ぎなかった。
西部軍報道部に属していた写真家の山端庸介は、長崎に原爆が投下された日、長崎に出向き、その「新型爆弾」による被害を記録するよう命じられる。山端は8月10日の午前3時から午後5時の14時間長崎に滞在し写真を撮る。その写真は52年北島宗人・編集/山端庸介・写真『記録写真 原爆の長崎』として発表される。この写真集に掲載された被爆翌日の写真は54枚。親族が保管している写真はオリジナル・ネガ66枚、複製ネガのみが33枚で当日100枚以上撮影されていたと言われた中の99枚しかなかった。
米国で原爆投下50年目の95年に山端の写真展を開催するという企画が持ち上がる。「長崎・ジャーニー」である。保存状態の良くなかったネガフィルムの修復が行われ、山端の写真が蘇る。この企画を知ったNHKディレクターが、山端の行程を順に追い、あの日の惨状を明らかにする番組NHKスペシャル「長崎 映像の証言~よみがえる115枚のネガ~」(95年8月9日放送)を製作する。取材中に日本写真協会でのネガ6枚、米国『ライフ』でのプリント5枚、米国立公文書館でのプリント1枚、共同通信社でのプリント1枚が新たに発見され、それまで撮影場所が不明だったところが特定できるなど、いくつもの発見があった。そうして山端の撮った長崎原爆の惨状写真は115枚となった。
NHKスペシャル 長崎 よみがえる原爆写真 NHK取材班 (著) |
この書籍はNHKスペシャル「長崎 映像の証言~よみがえる115枚のネガ~」を書籍化したものだが、NHKの取材には頭が下がる。山端の写真で生きている人物の写っているものはことごとく誰なのかを調べようとするところから始まり、その日のこと、その後のことについての証言を得る。対象とされた主な写真は、
ラッキーガール
さまよう兄弟
おにぎりを持った親子
トラックの側の負傷者
立ちすくむ少女
救護する看護婦
お乳をあげる母
である。ここに写っている本人もしくは遺族に出会い、貴重な証言を得ている。そうして、その時までごく普通の生活(戦時下ということもあるが)を送っていたが、瞬時に一転してしまった。そうして、その後を苦労して生きてきていることが、明らかになる。
写真で原爆の凄惨さは十分に判るが、その本当の苦しみとは何かということは、彼らの証言無くしては判るまい。写真に写った主を探し出し、証言を得ていったHNK取材班の努力によってより鮮明に戦争というものの凄惨さが明らかになる。
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