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2006.11.01

クリント・イーストウッド『父親たちの星条旗 Flags of Our Fathers』(06)

 毎月1日は1000円で入場できるというので、本当は残業して仕事しなきゃいけないと思いつつも、最近塞ぎ込んでしまっている気分の転換も期待して、悪名高き『デビルマン』の出来を確認しに行って以来の映画を見に行く。イーストウッドの『父親たちの星条旗』である。

 おそらく写真史上に残るであろう一枚の写真。ジョー・ローゼンタールによる硫黄島の擂鉢山山頂で星条旗を掲げる海兵隊の写真なのだが、これが米国で公開されるや否や反響を呼んだ。戦意抑揚には最善の材料であり、政府は写真に写った兵士を英雄に仕立て上げ、戦争継続のための国債の宣伝に用いる。イーストウッドの『父親たちの星条旗』はそんな兵士たちを描いた映画である。

 45年2月18日に始まった硫黄島での戦闘は当初米国は3日間で終了させる予定だった。いったん戦闘が始まると想像以上に日本軍の抵抗は激しく、島の占拠まで36日を費やすことになる。その間の犠牲は日本側の戦死者20,129名(捕虜200名)、アメリカ側は戦死者6,821名、負傷者21,865名だった。件の写真を撮られたのは戦闘開始まだ6日目(2月23日)のことであり、写真に写った6人のうち3名は硫黄島で戦死することになる。

 イーストウッドの映画構成は非常にオーソドックスなカットバックを多用したもので、久しぶりに映画を観ているという気になってしまった。カットバックは映画の主な技法だが、最近はあまり見かけることがないように思う。映画の主なシーンは3つ。硫黄島での戦闘、英雄として駆り出され各々の道を歩む、そして、現在、である。これらが頻繁に切り替わって、作品が構成されるのだ。こういった作りになったのはこの作品においてやむを得ないと思われる。イーストウッドの着眼点(テーマ)はともかく、これといったドラマがないので、通常の流れで見せるとどうしようもなく平坦で面白くなくなるのだ。それを表現方法にメリハリをつけ、飽きることなく見せるということを試みている。物語としては物足りなさを感じるかもしれないが、2時間強を退屈することは全く無かった。

 それにしてもこの硫黄島の戦闘は激しい。米軍の攻撃で島全体の地形が変わったともいう。日本軍は壕を掘っての対戦を試みたため、なかなか決着がつかなかったようだ。ベトナムでのジャングル戦に近いものがある。ただ、島であり日本軍の補給が完全に断たれたため、敗北は必至であった。映画でもその戦闘が描かれるが、『プライベート・ライアン』のスピルバーグも製作に関っており、かなりリアルに再現されている。海いっぱいの艦船などCGも多用されていることは間違いないが、全く気にならない。そうして戦闘の無残さはDディの『プライベート・ライアン』を超えている。

 戦闘がメインでないこと、人物の葛藤の描写が中途半端ということで、やや物足りなさを感じる人も多いのではないかと思ったりするのだが、あたしとしてはDVDが出るとおそらく買ってしまうだろうなという1本。来月6日には同じくイーストウッドによる日本からみた硫黄島の戦い『硫黄島からの手紙』(06)が公開されるが、どのようなものになるのか。外国人による日本人の描写は。チアン・ウェンの『鬼が来た!』(00)の日本人の描き方は日本人が不思議と感じる日本人の特性も描き切り、その完璧さに感心してしまったが、イーストウッドの日本人は素直に見られるものかどうか。

 久々の映画館だったのだけど6時過ぎの回で入場客6人くらい。割引デーなのにこの動員はどうしたものか。映画館業は斜陽産業だねぇ...

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