飴湯
たまに飴湯が欲しくなる。子供のころ、海水浴に行って飴湯を飲んだ時の記憶がどうしても抜け去らないのだ。
市販の粉末をお湯に入れて作る飴湯というのを買ってみたのだが、葛湯に近い妙に片栗粉の多いもので、ちっとも旨くなかった。飴湯というのは茶色く、そんなにドロドロしたものではいけない。
あの飴湯というのは何を原材料にしていたのだろうか。当地には麦から作るぎょうせん飴という水飴がある。店頭で売っていることは少なく、軽トラックによる移動販売が多かった。「ぎょーせーん、ぎょーせーん、飴にぃー、ぎょーせん」というおばあさんの呼び声を流しながら、販売をしていた。あたしが小学生の頃は頻繁に見かけたが、今は年にいちど見るか見ないかである。ずっと同じ声でやっているから、テープを使っているのだろう。どう考えても、声の主は亡くなっているとしか思えない。
その飴はたいてい、大きな味海苔を入れるような透明の瓶に入って売られるのだが、あまりに量が多く、一度も全部食べ切ったことはないのではないかと思う。夏場は柔らかくなるのだが、冬は硬くなり、食べるために箸を差しても取ることが出来ず、よく折ってしまっていた。久しぶりに食べたくなって調べてみると、ここで注文できるようで、あたしはさっそく注文した。
飴をお湯に溶かし、少しの生姜を入れる。どう考えても冬の飲み物だが、夏の海の家の定番となっているのは、やはり海に入って冷えた体を温めるためのものか。いずれにしても冷ました飴湯は邪道である。
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