藤原章・大宮イチ『神様の愛い奴 決定版』(01)/馬鹿とハサミは...
つい最近、こんな映画があるというのを知って、数日前に入手したばかり。『ゆきゆきて、神軍』(87)の奥崎謙三出演の映画。ジャンル分けすればドキュメンタリ映画ということになるとは思うのだが、純粋なドキュメンタリとも言い難い。まぁ、『神軍』もそういう感じであるのだけども。Amazonのマーケットプレイスで2000円(+送料340円)。
『神軍』の撮影の後、奥崎は元上官を殺すために上官宅を訪れたが、留守だったため、とりあえず自宅にいた息子を射殺しようとする。もともと奥崎はこの様子の撮影を希望していたのだが、当然の話であるが監督の原一男は拒否していた。そして奥崎は殺人未遂で逮捕される。天皇の崩御、秋篠宮の婚姻で2度にわたって恩赦の機会があるものの、いずれも拒否し、12年間満期服役する。この映画は、奥崎が出所するところから始まる。『ゆきゆきて、神軍』の当時は62歳だった奥崎もすでに77歳になっていた。
神様の愛い奴 (画像を拡大表示) |
いきなりこの映画(実は映画とは呼べない代物かもしれない)を観ろとは勧めないが、『ゆきゆきて、神軍』を観て吹っ切れないものを感じた者には観ることを勧める。おそらく『神軍』の補完するものがこの『愛い奴』になるのではないかと思う。しかし、『愛い奴』は内容的には完全なゲテ映画であり、これを観ただけでは何も意味をなさず、ただ吐き気を催すだけである。
一般的に評判は悪いがあたしは観て良かったと思っている。善し悪しはともかく『神軍』が何ものかということがよく判ったからだ。とにもかくにもあの映画を撮り上げた原監督は尊敬に値する。普通の人間ならば、収拾がつかなくなって放置してしまうだろう。あそこまで形にした監督の忍耐と努力にはあらためて驚き、感銘する。
簡単に云えば、それなりの社会的なテーマを持っていれば、どんな人格であってもそれなりのものに見えてしまうということである。いわゆる馬鹿とハサミは使いようという奴で、馬鹿もこっちを向いている間は相手にされるが、向こうを向いてしまうとハナから相手にされない(できない)ということなのだ。12年間の服役で、奥崎は向こうを向いてしまって、単なる奥崎しか見えなくなってしまった。
『ゆきゆきて、神軍』を観ていない人には、是非とも『ゆきゆきて、神軍』、そして次にこの『神様の愛い奴』を観てみると良い。これ程刺激的な組映画はないと思う。『愛い奴』を観た原監督はどのように思ったのだろう。ぜひ知りたいものだ。
ゆきゆきて、神軍 |
それにしても『愛い』というのが、なかなか読めなかった。「うい」なんだね。この『神様の愛い奴』というのは奥崎の台詞。神様がいちばん愛いしているのはわたし、だそうだ。パッケージの奥崎は、妙に内田裕也風。あの人も歳をとって世間離れに拍車をかけたように見える。
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