ドライブの途中で...
朝の11時に息子に起こされ、天気も良かったので、昼過ぎからひとりで車を転がしてみる。
久しぶりにダムに行ってみる。自宅から15分もかからないところにある。高さが87m、ビルにすると25階建て相当でそんなに大きなダムというわけではない。しかし、1m40cmくらいの柵の向こうには空間が広がっていて、やはり吸い込まれそうな気分になる。多少身を乗り出してカメラで光景を撮ってみたのだが、怖いという感覚は全くないが、カメラを落してしまうという恐怖感に襲われ困る。そんなに高くない自宅の賃貸の4階から撮る時も同様の気分になる。そんな状態ではまともに撮れないので、現在つけているハンドストラップだけでなく、ネックストラップもつけることにした。
ダムの奥には隣町に続く道になっているが、脇に入るとうちの町の山間部に入る。町の2/3は平地なのだが、1/3は山地になっている。山間部は小さな集落が点在しているという状態で、地元ながらあまり知らない。踏み込んでみると仕事の関係で名だけは知っているような町名のついたバス停があったりして、ここがかの地なのか、などと感心する。
すでに道は辛うじて離合できるような状態。集落を超えて、何もなくなると暫くしてまた集落が現れる。田畑はあまり見られない。林業がメインなのか。何をして生計を立てているのかとても不思議で仕方ない。住宅によっては二階の窓に木製の格子柵をつけた、昔ながらの装飾を施したものがあり、非常に懐かしい。親父の里で宿泊施設も備えた街道沿いの商店がそういう作りをしていたのだ。
どんどん山道を登って行くと、「路肩ガードレールなし、注意!」などとうちの役場が手書きでつくった看板が立っていて、両脇とも鬱蒼とした山林の間を走る道路は完全に一車線になる。離合も不可能な状態。車を回転できないと面倒なので、このあたりで引き返そうかと車をバックさせていると溝に脱輪させてしまった。
運転歴20年になるが脱輪は初めてである。廃車にしたことはあるが、車を擦ったことは片手で数えるくらいしかない。右前輪が完全に落ち込んでしまって、バックにしてアクセルをふかしてもタイヤが空回りするだけである。正直言ってお手上げ状態である。民家の全くない山道の途中。あたしはJAFの会員ではあるが、携帯電話を持ち歩く習慣がなく、その時も携帯電話を持っていなかったのだ。この状態で、JAFの会員証があってもただの紙切れでしかない。
が、幸いにもすぐ側に車が止まっていた。そうして、年配の男性。70歳くらいの人で、ダメもとで、脱輪したのでJAFを呼びたいと思う。携帯を持っているようだったらお借りしたい。と尋ねると、運良く携帯電話の利用者だった。携帯電話を借り、JAFに連絡する。土地勘がないのでその人に場所の詳細も聞く。本当に助かった。電話代を払おうとすると、ご縁ですから、と断られた。
驚いた事にその先にはさらに集落があり、しかも有名な喫茶店があるという。今、目の前にあるのはどう見ても山の持ち主が山の手入れをするために設けているような林道の入り口にしか見えないのだが。事実、上から宅急便の車が降りてき、「脱輪ですか。手伝いますよ」なんて運ちゃんが車から降りてきたのだが、JAFを呼んでいる旨伝えて、お礼を述べた。
再び、下から車が来たのだが、この運転手も車を停める。「脱輪? 落ちた車輪はひとつだけ? じゃ、思い切りハンドル切ってバックすれば多分抜けられるよ」なんて、とっととあたしの車に乗り込んでしまった。車は実に簡単に溝から抜け出した。昔、友人が片側の前後とも落してしまって、その時は5、6人かがりで担ぎあげたことがあったのだけど、前輪一方だけなら自力で出すことも可能なんだと初めて知った。よかったよかった、なんて、その人はとっとと行ってしまった。先のおじいさんはまだそのあたりにいたので、携帯を再び借り、JAFに断りの電話を入れる。
脱輪から20分くらいのことだけど、人の暖かさに触れて本当に嬉しかった。うちの地元って、こんなにいい人多かったかしらん? で、車を転がす時には携帯を持っておくことにもする。しかし、あんな山間部ではうちのキャリアじゃ使えないという話もあるけどね。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
この記事へのコメントは終了しました。
コメント