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2006.07.19

岩波書店『日本の写真家23 山端庸介』(98)

 ふとしたことでこの本の存在を知り、Amazonのマーケットプレイスで入手した。1700円(+送料340円)。岩波書店による日本の写真家の作品を集めた全40巻+別冊1巻の全集ものの一冊。日本の写真家にも興味深い人が少なくないので、全集で揃えてもいいかもとか思ってしまったが、この一冊を手にして、98,000円というのはあまりにも高過ぎると感じ、一気に馬鹿な気はどこかへ行ってしまった。何と言ってもページ数が少なすぎる。

岩波書店『日本の写真家23 山端庸介』(98)
岩波書店『日本の写真家23 山端庸介』(98)

大型本: 71ページ
出版社: 岩波書店
(1998/07)
ASIN: 4000083635

 広島の松重美人(よしと)(1913-05)と云えば、長崎の山端庸介(1917-66)となる。

 松重は中國新聞社のカメラマンで広島に原爆が落ちた日、市内で5枚の写真を撮る。自宅(理髪店)の荒れた部屋とそこから見える道向かいの倒壊した消防署、御幸橋西詰で2枚、そして皆実で罹災証明書を書く負傷した警官、それが人類史上唯一の被爆当日の記録となった。彼はそれ以上シャッターを押すことができなかったのだ。

 山端は海軍の従軍写真班員として大陸等で撮影を行った後、福岡の西部軍報道員に任命される。原爆が長崎に落されたのはその3日後のことである。広島と同じ「新型爆弾」使用の情報が入るや否や、状況を記録し報告するように命じられる。9日の午後3時に博多を出た山端は10日の午前3時に長崎に着き、14時間あまりで114枚の写真を撮り、博多に戻る。

 山端の写真には有名なものが何枚かがあるのだが、防空壕から顔を覗かせて微笑む少女やおにぎりを持ったまま佇む母子は特に印象深い。しかし、前者は結婚式の当日だったはずなのに親族の都合で式が延期され、さらに被爆してしまったという少女であり、その微笑みは山端が笑ってくれと頼んだものだった。後者はもともと食べる気力もないのに無理におにぎりを持たせたとも聞く。

 松重は自分自身、被爆者であり、山端はそうではない第三者であるという違いもあるだろうし、松重はたまたま居合わす結果になってしまった一方で、山端は上司より命じられた業務であり、またその重要性を認識していたという違いもある。非常に対照的な二人の写真家とその作品を見て、写真というものの捉え難さをますます実感してしまう。

 この本の解説で朝日新聞社『アサヒグラフ 1952年8月6日号』で山端の写真がまったく使われてないことを知る。

 ナガサキ以前の1940年の従軍写真も数枚掲載されているが、大判のカメラを使っているのか、非常に美しい鮮明な写真である。長崎での写真は構図が特殊なものが多く感じられるが、これらの写真は開放的で実に素直である。

 前に、長崎原爆戦災誌第一巻総説編の改訂作業が行われていることを記事にしたことがあったが、ネットで調べてみるとどうもこの5月には作業が終り、改訂版の発行が行われていたようだ。販売は長崎原爆資料館事務室でしか行っていないようだが、遠方からでも注文が可能。実際にメールで在庫の有無を問い合わせてみると、7/19現在、在庫があるという回答で、代金5000円を現金書留で資料館に送付すると、着払いの宅配便で送ってもらえるらしい。口座振込ができない、さらに発送は着払いというお金のやりとりに融通が利かない辺りいかにもお役所で、手間と費用がかかるのだけど仕方がない。今日の仕事の帰りに郵便局に行って、しっかり現金書留で代金を送っておきました。週末か週明けには改訂版を手にすることができるでしょう。新聞の記事では発行予定部数1000部ということなので、すでにどのくらい捌けているのか判らないけども、はやくに問い合わせをしておいた方がいいだろう。

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