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2006.07.20

大橋弘『1972 青春 軍艦島』(06)

 軍艦島に纏わる新しい書籍が出ていた。軍艦島が閉山になる1年半前に島にわたり、日雇労働者として半年を過ごした27歳のカメラマンの記録。もともと軍艦島に渡ろうというつもりはなく、長崎での放浪の生活のあげく金がなくなってしまったから、労働条件の良い軍艦島に渡っただけだった。

1972 青春 軍艦島
1972 青春 軍艦島

大橋 弘
単行本
出版社: 新宿書房
(2006/06)
ASIN: 4880083569

 著者が住んでいたのは日本で一番最初のコンクリート住宅の30号棟。非常に貴重な体験をしたものだと思う。

 写真とともに17編の文章で軍艦島の様子が描かれる。実際に労働者として働いていたカメラマンの手によるものなので、極々日常の軍艦島をみることができる。炭鉱夫でなく、地上労働を行っていたので、いわゆる炭砿労働の辛さというのは見えてこないが、男だけでなく、女性も肉体労働に多くついていたという事実も知る。若い男とおばさんが逃げたり、朝から5合の焼酎を呑む溶接工のおじさんがいたり。火事があって死人がで、その葬式が風変わりであったこと。写真は人間のごく普通の生活の場であった軍艦島を見せてくれる。ただやはり閉山間際ということもあって、人が随分と減っているいう雰囲気がすでに写真に漂っている。

 後藤 惠之輔・坂本 道徳『軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴』に引き続き、廃墟でなく生きていた頃の軍艦島を描くものが出版されるというのは非常に好ましい。著者は今回、32年ぶりに当時撮影した1000枚ほどのネガからこの写真集をつくったが、また30年後に作り直してもいいという。その時は軍艦島の記録というより、昭和の記録という意味合いの方が強くなりそうな気がする。

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