鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05)
興味深い写真論を知った。
写真論を始めると非常に難しい。写真は現実に存在するものを対象にしているが、それが現実そのものかどうかはっきりしない。スナップ写真と芸術写真と呼ばれるものはどう違うのか。各々を個別に論じていれば、完全な袋小路にはまってしまい、論を捨ててしまうことにもなりかねない。学生時代に読んだ、ロラン・バルト、J・デリダのこの著名な思想家の著した写真論は、いずれも思索を放棄してしまっているように思えた。
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鈴城 雅文 (著) 単行本: 197 p ; サイズ(cm): 19 x 13 |
『原爆=写真論―「網膜の戦争」をめぐって』に関していうと、ヒロシマ・ナガサキで撮られた写真をもとに写真が論じられる。原爆投下直後にたまたま撮られたきのこ雲の写真から、軍の広報係として原爆の災禍を意図的に撮ったもの、そして、継続する災禍を撮り続ける者が出くわした状況等、原爆に纏わる写真を通して、写真とは何かが論じられる。
写真とは何かと簡単に云うが、それは、写真を撮る者の問題でもあり、更にはそれを観る者の問題でもある。これらがすべて絡めて論じられて、ようやく本当の写真論になる。
原爆写真をターゲットにすることによって、これらの問題を一気に論じることが出来た。他にこれ程の題材は思いつかない。論者は原爆写真に注目したことで、すでに成功を約束されたようなものだった。
![]() | 明るい部屋―写真についての覚書(80) ロラン・バルト(著),花輪 光(翻訳) 単行本: 157 p ; サイズ(cm): 19 x 13 |
![]() | 視線の権利(83) J.デリダ(著), M.F.プリサール(写真) 単行本: 199 p ; サイズ(cm): 21 x 15 |
抽象的な哲学的言い回しの著書を読むのは久しぶりで、咀嚼には時間が係るかもしれないが、じっくりつきあってみようと思う。
![]() | 写真ノート(84-88) 大辻 清司 (著) |
写真論で面白かったのは、アサヒカメラに連載されていた大辻清司の『写真ノート』。写真家の日常的な思索がまとめられたもので、著者の素直な率直な写真に対する態度は、写真の奥深さがあらためて再認識され、もう一度、我々が写真と真摯に向き合う機会を与えてくれるものである。
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