« キネマ旬報社/キネマ旬報映画総合研究所『映画検定』 | トップページ | 鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05)(BlogPet) »

2006.04.03

鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05)

 興味深い写真論を知った。

 写真論を始めると非常に難しい。写真は現実に存在するものを対象にしているが、それが現実そのものかどうかはっきりしない。スナップ写真と芸術写真と呼ばれるものはどう違うのか。各々を個別に論じていれば、完全な袋小路にはまってしまい、論を捨ててしまうことにもなりかねない。学生時代に読んだ、ロラン・バルト、J・デリダのこの著名な思想家の著した写真論は、いずれも思索を放棄してしまっているように思えた。

原爆=写真論―「網膜の戦争」をめぐって


原爆=写真論―「網膜の戦争」をめぐって

鈴城 雅文 (著)

単行本: 197 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 窓社 ; ISBN: 489625077X
(2005/06)


 『原爆=写真論―「網膜の戦争」をめぐって』に関していうと、ヒロシマ・ナガサキで撮られた写真をもとに写真が論じられる。原爆投下直後にたまたま撮られたきのこ雲の写真から、軍の広報係として原爆の災禍を意図的に撮ったもの、そして、継続する災禍を撮り続ける者が出くわした状況等、原爆に纏わる写真を通して、写真とは何かが論じられる。

 写真とは何かと簡単に云うが、それは、写真を撮る者の問題でもあり、更にはそれを観る者の問題でもある。これらがすべて絡めて論じられて、ようやく本当の写真論になる。

 原爆写真をターゲットにすることによって、これらの問題を一気に論じることが出来た。他にこれ程の題材は思いつかない。論者は原爆写真に注目したことで、すでに成功を約束されたようなものだった。

明るい部屋―写真についての覚書(80)
明るい部屋―写真についての覚書(80)

ロラン・バルト(著),花輪 光(翻訳)

単行本: 157 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: みすず書房 ; ISBN: 4622049058
新装版(1997/06)

視線の権利
視線の権利(83)

J.デリダ(著), M.F.プリサール(写真)
鈴村 和成(翻訳)

単行本: 199 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: 哲学書房 ; ISBN: 4886790240
3巻 (1988/07)

(クリックで拡大表示)

 抽象的な哲学的言い回しの著書を読むのは久しぶりで、咀嚼には時間が係るかもしれないが、じっくりつきあってみようと思う。

写真ノート
写真ノート(84-88)

大辻 清司 (著)
単行本: 327 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: 美術出版社 ; ISBN: 4568201306
(1989/05)

(クリックで拡大表示)

 写真論で面白かったのは、アサヒカメラに連載されていた大辻清司の『写真ノート』。写真家の日常的な思索がまとめられたもので、著者の素直な率直な写真に対する態度は、写真の奥深さがあらためて再認識され、もう一度、我々が写真と真摯に向き合う機会を与えてくれるものである。

|

« キネマ旬報社/キネマ旬報映画総合研究所『映画検定』 | トップページ | 鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05)(BlogPet) »

ヒロシマ・ナガサキ」カテゴリの記事

写真集・画集」カテゴリの記事

文化・芸術」カテゴリの記事

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/90327/9415085

この記事へのトラックバック一覧です: 鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05):

« キネマ旬報社/キネマ旬報映画総合研究所『映画検定』 | トップページ | 鈴城雅文『原爆=写真論-「網膜の戦争」をめぐって』(05)(BlogPet) »