日本原水爆被害者団体協議会
『ヒロシマ・ナガサキ 死と生の証言― 原爆被害者調査』(94)
『長崎原爆戦災誌』と共に古本として購入したもの。購入価格は3780円。読み終えるのに3週間ほどかかってしまった。途中、『カウントダウン・ヒロシマ』を読んでしまったこともあるが、内容が重く、読み続けるのが辛くなったというのもあった。
ヒロシマ・ナガサキ 死と生の証言 ― 原爆被害者調査 日本原水爆被害者団体協議会(編集) 単行本: 595 p |
本文は2部構成となっており、第一部は『「あの日」の証言』と題され、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が1985年に実施した全国に生存している被爆者の中から13,168名に対して行った調査のうち500例を抽出したものでなっている。第二部は『被爆者の死』。先の調査に被爆者遺族289名を加えたものの350例の回答を掲載する。原爆投下後、40年後に実施された大規模調査であり、被爆者、その遺族の年齢を考えるとこれからはこれ以上の調査・証言の収集は不可能ではないかと思われる。しかし、この調査自体も時既に遅しという気もしないでもない。事実、当時、40歳以上という年齢だった人の証言の割合はかなり低くなり、若年層のものが主になってしまっている。
第一部では「市民の描いた原爆の絵」のように生々しく、あの日の様子が描写される。おそらく実際に体験したことの幾らも表現できていないというのは伺えるが、その思いの強さは十分に伝わってくる。
しかし、原爆の本当の怖さというのは第二部の方にある。第一部の直接的被害は他の空襲の方が酷いではないかというような話もよく耳にするが、直接死を避けられた後に襲ってくる原爆症の恐ろしさはおそらく被爆者本人・身内にしか判らないのではないか。そういう意味で、あの日以降の死も多く取り扱う『被爆者の死』は衝撃的である。
爆心地近くにいながらも、家族が奇跡的に全員無傷で逃げ延びることができ、肩を叩き合って喜んだのも束の間、次々と家族が原爆症で苦しみながら亡くなり、幼い子供がひとりだけ残される。10年後、20年後に突然引き起こる原爆症。家族が倒れるのを見て、次は自分ではないかと不安に駆られる。国からは何も援助がなく、すべてを失っている状態で治る見込みのない病に医療費を捻出することの難しさ。アメリカより自国を怨む。
こういった現実は表には見えてこない。
いずれにしてもこういった悲劇は核に限った話ではない。おそらく戦争全般の話でもある。兵器を作って、戦争をするのは簡単だけれどね。憲法9条をおいそれと気軽に変えようとする連中の心理がね、あたしにはよく判らん。
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コメント
O-Maruが、日本でない日本原水爆被害を空襲しない
投稿: BlogPetのフタキンSkywalker | 2006.01.12 11:28