押井守『methods』シリーズ
アマゾンのマーケットプレイスで予約注文を入れていた『「イノセンス」methods押井守演出ノート』が注文確定していた。定価2800円(税別)が1680円(+送料340円)だった。定価で買うのにはちょっと高く、カバーに折れがあるだけで安くなるのは嬉しい。ただ、マーケットプレイスはどうしてかいつも金欠になりつつある時に確定するので、心臓とサイフに負担が大きい。
あたしは映画ファンだけども、アニメファンではない。アニメーションで一目置いているのは押井守だけで、一般的に人気のある宮崎駿についてもほとんど興味ない。押井の作品はどちらかと言えば、大人向けの内容、そして、そのスキルもダントツである。まぁ、時に大コケしてくれるのだけども。
アニメーションを作るという事を考えるとぞっとする。
実写の劇映画(8mmフィルム)は学生時代、映研で何本か撮ったことがある。シーンを想像して絵コンテを描いて、撮影現場に望むわけだが、レンズの画角の問題やら、ロケ現場の状況から思った構図で撮影できないことが多い。現場で悩み通しても仕方ないわけで、妥協に妥協を重ねて撮ってしまう。まぁ、役者がちゃんと写っていれば、それなりに見れなくはない。
アニメーションは一から十まで人間の手によって構築される。イマジネーションしたものを不自然でない状態で目に見えるものにしないといけないのだ。それがプロと呼ばれる人によってなされていても、やはり感嘆せずにいられない。特に押井の作品は複雑な表現がとられており、その技術は極限を極めようとしているかにも見える。
『methods』シリーズは、映画というか、見せるという行為の基本でもある、レイアウトをメインに表現と効果の技術を分かり易く解き明かしてくれる。何とはなく見ていた映像が、厳密な意図をもって作られたものであり、その罠に観客の我々がはまっていることをあらためて知る。
「イノセンス」methods押井守演出ノート From Layouts of “Innocence” 押井 守 (著), プロダクションI.G (著) |
Methods―押井守「パトレイバー2」演出ノート From Layouts of “PATOLABORS 2 the movie” 押井 守 (著), プロダクションI.G (著) |
(『Methods―押井守「パトレイバー2」演出ノート From Layouts of “PATOLABORS 2 the movie” 』はすでに絶版でマーケットプレイスでも法外な価格で出品されているので、復刊ドットコムをあてにした方がいいかもしれない。あたしも2年前の復刊をここで知って購入に至った。)
本文は実際に映像を起す際に使われたレイアウト指定資料を用いているようだが、当然、絵コンテより詳細だ。複数のレイアウターが分担して作成していると思われるのだが、それを作品を通して一貫性のあるものに調整するというのはやはり押井監督の作業になる。動きのある部分は赤に着色され、実に見やすく工夫されている。
普遍的な映像スキルはもちろんのこと、映画製作中のこぼれ話のようなものも随所に見られるので、作品のファンには特に楽しめる。ただ、セクションが設けられ、色んなシーンがかき集められて説明されるため、DVDを持っており、実際の画面とmethodsを見比べてみようと思っても、ままならない。このあたり、DVDの映像特典としてmethodsをコンテンツ化し、見比べることが容易くなると素敵なのだが。これが実現すれば、DVDに倍の価格を払っても惜しくはないと思う。
劇映画でも常に緻密な構図を図り、風を見せるためにヘリを飛ばしてしまうというタルコフスキーのような天才監督もいるが、押井も同様なところに居るのかもしれないと思う。
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