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2005.10.28

W.ユージン・スミス『ユージン・スミス写真集―1934-1975』(99)

 ユージン・スミスの他の写真も見たくなったので、『ユージン・スミス写真集―1934-1975』を購入する。発行からまだ6年ほどなのにすでに絶版。古書店からの入手。この写真集は翻訳版で、英語で書かれた原書については容易く入手できるようだ。ただし、価格が随分高く設定されている。


ユージン・スミス写真集―1934-1975

ユージン・スミス, ジル・モーラ, ジョン・T.ヒル, 原信田 実

大型本: 352 p ; サイズ(cm): 32
出版社: 岩波書店 ; ISBN: 4000082108
(1999/12)



W. Eugene Smith: Photographs 1934-1975

Gabriel Beauret(著), John T. Hill(著), Serge Tisseron(著)
Alan Trachtenberg(著), Gilles Mora(編集), W. Eugene Smith(写真)

言語:英語 ; ハードカバー: 352 p
出版社: Harry N Abrams ; ISBN: 0810941910 ; (1998/10)

 ユージンの写真はドキュメンタリにしては、実にフォトジェニックであると思っていたが、それは然るべきことだったようだ。

 ユージンは暗室での作業に膨大な時間をかけたようだ。つまり、撮られたフィルムをプリントする際、イメージにあうように限りなく時間をかけて処理をしていたのだ。下手をするとやらせとも言われてしまうような、2枚のフィルムをかけあわせた合成処理も行っていた。

 彼は次のようなことを言っている。(『写真集 水俣』「英語版序文」から)

これは客観的な本ではない。ジャーナリズムのしきたりからまず取りのぞきたいのは言葉は「客観的」という言葉だ。そうすれば、出版の「自由」は真実に大きく近づくことになるだろ。そしてだぶん「自由」は取りのぞくべき二番目の言葉だ。このふたつの歪曲から解き放たれたジャーナリストと写真家がほんものの責任に取りかかることができる。(中略)

(中略)「ジャーナリズムにおける私の責任はふたつあるというのが私の信念だ。第一の責任は私の写す人たちにたいするもの。第二の責任は読者にたいするもの。このふたつの責任を果たせば自動的に雑誌への責任を果たすことになると私は信じている。」(後略)

(同・裏表紙より)

 写真はせいぜい小さな声に過ぎないが、 ときたま――ほんのときたま―― 一枚の写真、 あるいは、一組の写真がわれわれの意識を呼び覚ますことができる。 写真を見る人間によるところが大きいが、ときには写真が、思考への触媒となるのに充分な感情を呼び起こすことができる。われわれのうちにあるもの――たぶんすくなからぬもの――は影響を受け、 道理に心をかたむけ、誤りを正す方法 を見つけるだろう。そして、ひとつの病の治癒の探究に必要な献身へと奮いたつことさえあるだろう。そうでないものの、たぶん、われわれ自身の生活からは遠い存在である人びとをずっとよく理解し、共感するだろう。写真は小さな声だ。 わたしの生活の重要な声である。それが唯一というわけではないが。私は写真を信じている。もし充分に熟成されていれば、写真はときには物をいう。それが私 ――そしてアイリーン――が水俣で写真をとる理由である。

 以前から写真は作られるものだと思っていた。人間を介して撮られた段階で、一見、ありのままを写しているように思われるものにも、なんらかの意図が生じてくる。真の客観というものはそもそも存在しない。客観と正義、このふたつは限りなく嘘に近い。

 写真も絵画とおなじだと思うと、写真をいじくるのにも抵抗はないだろう。いずれもイメージを具現化するのが可能な媒体なのだ。実際に見えたものをデフォルメするのは絵画にとっては当然の行為である。ジャーナリストとはいえど、ユージンは限りなく芸術家でもあった。

 『カントリー・ドクター』の一部がここで紹介されているので、是非見て欲しい。『ユージン・スミス写真集―1934-1975』でも、フォトエッセイのスタイルをとったものが、写真だけ、一部紹介されている。『写真集 水俣』にしても、有名な写真をいくらか掲載しても、本文がないと、その価値は半分以下もない。この写真集を見て、かえって欲求不満になってしまった。

 ちなみに購入価格は定価8400円(税込)を4900円(+送料600円)で。読者はがき、補充注文カード付きの美本。この書籍はクロス装丁で豪華なつくりである。さらにケースがあれば申し分ないのだけど。

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コメント

はじめまして。
「こにのつぶやき」から辿りつきました。
ユージン・スミス氏の写真!私、20年ぶりに拝見しました。高校生時分、友達のカメラマンの助手(モデル)をしていた所為で、当時は写真に大変興味があり、いろいろな写真集や雑誌を読み漁っておりました。
その中で大変印象深かったドクターの一連の写真、、、
本当に久し振りにこちらで拝見できて、大変嬉しく思います。

投稿: fumi_o | 2005.10.29 20:48

fumi_oさん、こんにちは。

あたしもスミスの見直したのは、15、6年ぶりといったところです。写真というのは一枚の紙っ切れでありながら、どうしても忘れられないものがいくつかあったりするんですよね。

カントリー・ドクターはスミスのなかでも特にドラマチックな組写真になると思います。(シュバイツアーもなかなかですが) サイトの一枚目の幼女を治療するドクターや、最後から2枚目の往診するドクターは何とも言えぬ趣があって、そうそう簡単に忘れられるものではありません。

図書館に行けば見られるんでしょうけど、いつになっても自宅でゆっくりと眺められる環境、つまり、購入可能な状態にしていて欲しいものです。

投稿: O-Maru | 2005.10.29 22:01

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