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2005.09.07

『軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴』

 軍艦島に関する著書でおそらく最新のもの。


軍艦島の遺産―風化する近代日本の象徴

後藤 惠之輔 (著), 坂本 道徳 (著)
新書: 222 p ; サイズ(cm): 18
出版社: 長崎新聞社 ; ISBN: 493149353X
(2005/04)

 軍艦島海上産業都市に住む-水辺の生活誌でも端島での生活が語られていたけども、この本では全体の1/3の70ページに渡って当時の生活ぶりが詳細に語られる。

 生活ぶりについての記述を担当した坂本氏は、小学校6年生に島に渡り、閉山になるまでの8年間を端島で過ごしている。終戦までの朝鮮人による強制労働もなく、また、組合により労働環境もよくなった頃で、端島が一番充実していた頃ではないかと思う。

 居住は一家族、2部屋が基本。2部屋といっても6畳と4畳半、もしくは、6畳と8畳といった非常に狭いもので、各戸には流しがあるだけで、便所は2戸にひとつ、風呂は全島で3箇所というものだった。しかし、昭和40年代というのはあたしの住んでいたところでもそうだったけども、プライバシーという面では劣るものの、地域がひとつの家庭という雰囲気があった。向こう三軒両隣というけども、端島では島全体がそういう感じだった。その光景がありありと目に浮かぶ。

 炭砿は24時間操業で、シフトは3パターンだった。朝8時から夕方4時までの一番方、夕方4時から深夜12時までの二番方、そして深夜12時から朝8時までの三番と呼ぶ。これがどのようなサイクルで回ってくるのかは判らなかったが、島全体の光景はさながら不夜城という感じだったはずである。ちなみにあたしの父親も化繊メーカーで工場勤務をしていて、30年ほど3交代勤務をしていた。端島と同じ時間パターンで、うちでは早番・遅番・夜勤とかと言っていたと思う。4日間同じ勤務時間が続いて、一日休みがあって、次は別のパターンに、というような感じだったはずだ。とにかくしょっちゅう生活パターンが変るので、今となって考えてみると大変だったろうと思う。また自分も、夜勤帰りで父親が寝ていると昼でも静かにしていなければ怒られたりする。これもなかなか大変だった。

 ほほうと思ったことがひとつ。端島のアパート群には9階という高層なものもあるにもかかわらず、どれもエレベータがついていない。生活するのには毎日、この9階を上ったり下りたりしなければならないのだけど、階段の作りがよく、9階まで上がってもそんなに疲れを感じないというのだ。建築物によっては階段の感覚がまったく異なる。以前にいた部署の棟は4階建てと低層だったが、最上階に上がってくる者は絶対といっていいくらい息を切らせていた。アパート群が各々橋がかけられて、地上に下りずに往き来できるというのは知っていたが、更にこういう工夫があるというのには「そらそうだろうなぁ」と思いつつ、あらためて驚かされた。

 端島を世界遺産にするかどうかということは、さておいても、軍艦島は昭和40年代という日本人が日本人らしく生きることのできた最後の時代のタイムカプセルであることには間違いない。朽ちていく軍艦島を保存するか否かは別にしても、その居住形態をもう一度研究することは十二分に価値のあることだと思う。

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コメント

「軍艦島の遺産」書評ありがとうございます。
まだまだ書き足らないこと等はありますが
今後機会がありましたら書いていきたいと思います。
「昭和40年代という日本人が日本人らしく生きることのできた最後の時代のタイムカプセルであることには間違いない。」・・・
私も同感です。
坂本 道徳

投稿: doutoku | 2005.09.08 15:35

 坂本さん、はじめまして。「第3章 端島に住んで」は非常に興味深く読ませて頂きました。ありがとうございました。

 こういった生活の様子は写真や見取り図で何とはなく読み取れるんですが、想像にしか過ぎない。そういったところをちゃんと描いてもらって、すっきりしたという感じがあります。

 コミュニティとは何かということを知るためにも非常に有効な材料だと思いますし、元住民の方の証言を集めるというのは価値のあることだと思います。そういった方面の活動も勝手に期待しております。

投稿: O-Maru | 2005.09.08 19:55

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受信: 2005.09.08 15:30

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