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2005.09.02

志麻永幸『愛犬家連続殺人』

 犯人であるペット販売業の関根元(53)と前妻の風間博子(37)が逮捕されたのは、兵庫県南部地震の12日前の95年1月5日だった。その3日後、証拠のないこの二人の犯罪の証言を行い警察の立件の手掛かりを作った、この本の著者でもある関根元の経営するペット販売業の元役員山崎永幸(38)が死体損壊・遺棄の疑いで逮捕された。


愛犬家連続殺人

志麻 永幸 (著)
文庫: 312 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4043553013
(2000/09)

 少し前に、保険金殺人をあつかった貴志祐介の『黒い家』を読んだばかりだったが、現実には敵わなかった。「事実は小説より奇なり」というが、殺人狂は心のない人間ではなくて、腰の低いホラ話ばかりのペット屋のおやじだった。極度の躁病を患っているという感じもある。

 共犯にされてしまった俺は殺しの現場ではなく、殺しの後の後始末を手伝った。手伝ったといっても、遺体の輸送時の運転をしたり、包丁研ぎをしたくらいだ。遺体の始末の仕方は想像を絶するもので、尋常な人間なら耐えられることのできない方法でやっている。それを夫婦で鼻歌混じりにやってのける。

「わたし、こんな奴のチンチン切るの嫌だから、あんたこれやってよ」
 博子がそう言うと、関根は「おう、分かった」と快活に応じる。

 犯人関根の殺害者数ははっきりしない。この事件では4人が殺害され、警察の判断では、証拠がなく立件できないものを含めて10数件、そして本人が言うのには35人。

「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなしだ。殺しのオリンピックは本物のオリンピックよりずっと面白いぞ」

「俺は悪い奴をじゃんじゃんやっつける。俺は昭和の必殺仕置人だ。だが、鬼平みたいに警察にはならねぇ。だから個人的にやっているんだ。たまには金儲けもするが、俺の殺しは世の中のためなんだ。だが、殺しを続けていくうちに、俺は殺しの世界で一番の男になりたいと思うようになった。人間、なんでも一番になんなきゃ駄目だ。殺しにかけちゃ、俺がいまナンバーワンだ」

 「ボディーは透明」という言葉が耳に残る。

 最後の1/6は事件そのものではなく、取り調べをする警察と検察とのやりとりについて。これらの組織が駆け引きばかりでいかにいい加減であるか。ついでに取り上げられている割には、事件そのものがあまりにも淡々としているため、印象が深くなってしまったきらいもある。

 山崎永幸本人が手記として書いたということになっているが、実際には当時、週刊新潮の記者であり、後に同事件を取り扱った『悪魔を憐れむ歌』の蓮見圭一 が書いたという話である。

 山崎は実刑を受け、3年間服役したが、主犯のふたりに関しては現在も裁判が行われている。7月11日、控訴審判決で、東京高裁はいずれも死刑とした1審浦和地裁(現さいたま地裁)判決を支持し、両被告の控訴を棄却した。しかし、両被告の弁護人は直ちに上告している。

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コメント

>「事実は小説より奇なり」
本当にそうですね。
世の中にはこんな人たちもいて、自分の隣で生活しているかもと思うと怖いですね。

投稿: びわ子 | 2005.09.05 23:45

 実際に関根と付き合いのあった人は「殺っててもおかしくない」と当たり前のように思っていたようです。
 2ちゃんねるの◆埼玉の愛犬家連続殺人事件について・・・◆ではそういった情報が交換されています。

投稿: O-Maru | 2005.09.06 00:12

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