岡本喜八『日本のいちばん長い日』(67)
邦画の中で印象深かった作品の一本。最近ようやくDVDになったのが不思議でならない。衛星か何かで見てから20年ぶりくらいに見直す。岡本の作品は決して少なくないのだが、なかなか見る機会がない。見たことがあるのは本作と『大誘拐 Rainbow Kids』(91)くらいである。
日本のいちばん長い日 監督: 岡本喜八 |
「日本のいちばん長い日」というのは、御前会議でポツダム宣言を受諾を決定し、翌8月15日正午に玉音放送をするまでの1日間のこと。敗戦は日本人にとっては受け入れがたいものであったが、天皇の判断もあり、降伏することになる。天皇の肉声による終戦の詔書の読み上げ放送は生放送でなく、あらかじめレコードに録音されたものを用いることになったが、敗戦を認めない一部の軍人たちはこのレコード盤を強奪しようとする。
2時間40分弱の作品だが全くといっていいくらい中弛みがない。この連続したテンションは監督の腕もあるだろうけど、当時のオールスターキャストによるところもあるかもしれない。演技に重みがあり、実際にあったろう緊張感が見事に再現されているのか。そういえば大人が大人の顔をしている。今の日本には大人の顔をした人間がいない。もっとも分別のなくてはならない首相だってあの様だ。
印象深いキャラクターといえば首相官邸を襲う横浜警備の隊長を演じた天野英世である。仮面ライダーで死神博士を演じたあの人だが、虫歯で歯の欠けまくった口を大きく開けてヒステリックな号令をかける様は、当時の日本のマッド・ソルジャーの典型だ。戸浦六宏も外務次官役で出ているけども、なかなかいい。
戦後まだ20数年の公開当時、皆はどのような気持ちでこの映画を見たのかが気になる。高だか20年くらいでは歴史になってしまわないはずだし、実際の関係者も、また20代後半以上のものは何らかの形でそれに係わっているはずだから。
玉音放送の内容についてはこちらを参照のこと。
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コメント
DVD買ってみた。確かにテンションの高さが持続してい
るね。(でも演技力なんて無いに等しい感じだけどね>
くろさわとしお(^_^;))
大人の演技というより、出演者が戦争経験(体験)ある
からリアリズムが出てると思う。(その点、今の役者
じゃ無理無理(^_^;) まともな戦争映画作るなら徴兵制
復活かねぇ(^_^;))
タイトル通り「日本で一番長い日」、オープニングの
説明も本当に「長い」です(^_^;) 確か約20分(^_^;)
でもああいう活気あふれた日本映画はもう無理かな。
今の状況じゃ(^_^;)
投稿: きつつき | 2005.09.20 21:40
黒沢年男はねぇ... 汗かき過ぎだよねぇ(^^;)
戦争を体験しているかいないかは大きいでしょうね。主だった役どころの人は戦争を青年時代以上で過ごしているし、例えば元ヤンキーはいつまでたっても眼から"険"がとれないのと同じくらい、戦争の陰を身に隠し持っているのは確かだと思う。
東映の激動の昭和史シリーズはこの作品から始ったらしいけど、後のはどうなのかな。『東京裁判』も一応、その延長で劇映画になるはずだったけど、ドキュメンタリになってしまったし。邦画の戦争映画は悲壮感ばかりであまり好きではないのだけど、これよりもう少し前に作られた『太平洋奇蹟の作戦 キスカ』はよろしいですね。そのうち記事にするつもりです。
投稿: O-Maru | 2005.09.20 23:09