エヴァンゲリオン/邪悪なるもの
もう一昨年になるんだけど、エヴァンゲリオンのリニューアルDVD-BOXというのが発売された時に購入した。当地にはテレビ東京の系列局がなく、数年遅れて週末の深夜帯に放送されているのをたまに見ていた程度だったが、90年代を代表する作品のひとつということでもあり、全篇ちゃんと見ておこうと思ったのだ。
いまだに数ヶ月に一度、DVDを引っ張り出してきて、何話か見直している。
NEON GENESIS EVANGELION DVD-BOX 監督: 庵野秀明 |
このアニメは最後物語が破綻するということで、取り沙汰されたものだが、それを差し置いても表現が凄い。登場するキャラクターに萌えたりすることは全くなく、萌えるのが理解できないというクチなのだけども、描かれている内容というとダークサイドをかなり絶妙についてきており、それが見事としかいえない。
エヴァの人気は神秘主義が取り入れられ、深読みできる部分が多いからだと言われているけど、それよりも生理的なものが多いと思う。
どういったところがどうであるのか、表現できないもどかしさがあるのだけど、ナチスに対するものに非常に似た印象がある。ナチスは大衆を惹きつけるためのファッションを重視したが、それらのファッションに惹かれる一方でどことはなく、後ろめたさを感じる。それがナチスだからという歴史的な結果ではなく、逆卍に象徴されるように生理的なところでどこか危うさを感じるのだ。それと似たような嫌気さがエヴァンゲリオンには全篇にわたって漂っている。
デビッド・リンチは奇しい映画を撮る(当然、あたしはそれが好き)んだけど、エヴァに関しては庵野は遥かにリンチを超えてしまったと思う。
美は大抵の場合、調和と統合によって精神の高みを目指すものだけど、たまにこういった目に見えぬ邪悪さを見事に捉えることもある。そういった精神活動をどう評価するとよいのだろう。やはりカタルシスのためにはなくてはならないものなのか。
エヴァが子供向けの企画として通り、実際に夕刻に放送されたのが信じられない。あらゆる意味で大人向けの作品であるからだ。
ちなみにこのDVD-BOXは定価の2割引きくらいで買ったのを、本編の10枚のDVDを残して特典Disc・ケース等すべてヤフオクで2万2千円で売払い、実質1万円強で手に入れたものであります。
| 固定リンク
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 本日入荷の積ん読素材(2010.04.12)
- ビッグコミックススペシャル 楳図パーフェクション!「わたしは真悟」(2010.01.30)
- 楳図かずお「わたしは真悟」(2010.01.31)
- 佐々部清 『夕凪の街 桜の国』(07)(2009.01.14)
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 本日入荷の積ん読素材(2015.03.30)
- スティーヴン・スピルバーグ「未知との遭遇」(77)(2014.11.01)
- アルフォンソ・キュアロン「ゼロ・グラビティ」(13)(2014.09.20)
- 訃報 米倉斉加年(2014.08.27)
- 訃報 ロビン・ウィリアムズ(2014.08.12)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 起き上がりムンクは絶品(2013.04.30)
- 「怪談の日」制定(2012.06.22)
- 二玄社編集部 編「大書源」(07)(2010.05.02)
- フジテレビ開局50周年記念ドラマ特別企画 黒部の太陽(2009.03.22)
- リバーダンス(2008.05.14)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
何故か我が家にもエヴァのDVDあります(^_^;)
既に大人になってから見た作品なので、多分思春期に見た場合とはかなり違った見方になっただろうなあ(影響を受けなかったというか)と思います。
ちなみに、私が最も感情移入したのは、シンジの母親だったりしますし(^_^;)
回想部分にしか登場しないちょい役にもかかわらず、息子がいるという共通部分と息子への感情が非常に共感できたせいかもしれないですね。
多分制作者の意図とは全く違うところで反応しちゃったような気がします<自分(^_^;)
本来、シンジなどの心の闇に反応すべきなんでしょうけど、あれをみると、「おお!少年、がんばれ!皆、その悩みの道を通って大人になったのだよ!」としかエールを送れないんですよ。(-_-)
それよか、シンジの父親や母親の心理の法に興味がいくのは、多分今の自分の立場と近いせいかもしれませんね。
投稿: こに | 2005.06.05 09:04
母親に感情移入されましたか。素朴な疑問ですが、それってエヴァ初号機になって何時もシンジを見守っているということに対する共感ということでしょうか?
彼女に関してはゲンドウと同等かそれ以上のしたたかさを持った人間ということで、登場人物の中で最も不気味で怖い人物だと認識しています。
シンジの心情に関してはありふれたもので中年の域に達しそうな庵野が今の自分のことのように描いているのが不思議でなんないです。どのような思春期を送ってきたのか知りたくなります。
投稿: O-Maru | 2005.06.05 13:01
ママは、初号機と融合したとは解釈していませんでした(^_^;)
リツコさんがエヴァの失敗作を見せた中に、ママ実験機もあると思っていたものですから。
(エヴァはどうにでも解釈できるような作りになっているから、そこが面白かったりします、私の場合。)
でも、息子への愛情は本物だと思いますよ。
でなければ、シンジが融合した状態からのサルベージが成功するきっかけのシーンが、自分の誕生の瞬間の筈がありません。自分がきちんと両親から望まれて誕生したんだということが確信できるような愛情をちゃんと母親からメッセージとして受け取っていたから、無事第二の誕生(笑)が成功したわけで。
そして、映画版を見て思ったのが、そのメッセージがちゃんと彼の深層心理に刻み込まれているから、思春期の悩みを克服したのだなと思いました。その時の導き役は、母親の影を感じさせるレイでしたけど。
映画版見て思ったのですが、これって結局、シンジが不安定な思春期をしっかり通過して大人に成長するために、人類まるごと利用した壮大な青春物語で、たった1人の息子のために、父親も随分思い切ったことをしたものだなと(笑)
いくら、今まできちんと向き合えなかった罪滅ぼしとはいえ、息子のためにその他大勢を犠牲にしちゃったのね。(で、息子の嫁さんは、何故か1人あの海から脱出していて、それもなかなかおもしろい趣向だなと。)
ところで、ゲンドウ氏よりも奥さんの方がしたたかだというのは何となくわかります。旦那さんをきちんと操縦していたのだろうなと(^_^;)
もしかして、彼女が意図的に初号機への融合をめざしていて、その結果、息子を伴侶に選んだとすると、これもなかなかすごい愛情だなと思ってしまったりして。夫よりもしっかり息子を選んでいるじゃんと恐ろしい考えがよぎってしまいました(笑)
所詮、彼女にとってゲンドウ氏は種馬でしかなかったとしたら、レイにユイを重ねてみていたゲンドウ氏が哀れです(>_<)ヽ
>シンジの心情に関してはありふれたもの
だから、あのアニメは受けたのでしょうね。
皆、思春期に誰でも通る道のりだし、シンクロしやすい心情ですからね。
たとえ、監督が、自己セラピー代わりに作ったものだったとしても。
そして、ありふれているから、私は、「少年!良い青春時代を過ごせよ!」とエールを送ってしまいたくなるのですよ(笑)
投稿: こに | 2005.06.05 19:05
こにさん、随分、見込んでますね。あたしは軽く通して1、2回しか見てないので、そこまで深くは見てなくって、まだまだ印象のレベルです。
あ~、そう言われてみると母親って初号機ではなくってレイだったんですかねぇ。そのあたりの絡みをまったく読もうとせずに見てるなぁ。まぁ、すべてシンジの成長の問題にされてなおざりにされるんだから、多分どうでもいい事なんでしょうけど。
ユイに関してはすべてを仕組んだ張本人なのではないかと思っています。だから彼女の出てくるシーンというのは非常に怖い。
いやぁ、本当にまともにレスできなくてご免なさい。ちなみにTV版の最終話を初めて見た時、自己セミナーそのものじゃんとひっくりこけてしまったクチです。
投稿: O-Maru | 2005.06.06 01:22
いえ、私も通しで1、2回程度だし、映画版は子どもの妨害にあいつつ見たので、ちゃんと見ていないんですよ(^_^;)
多分、見る視点が違うから、感想も違ったものになるんでしょうね。
軽く見ている程度なので、ユイが黒幕というよりも母親としての側面に注目してしまうし、母親なら当然の言葉を彼女は言っているので、私は彼女に共感するわけです。
レイは、器(肉体)は、ユイの遺伝子から作ったけど、魂はリリスですよね。映画版で、レイがリリスの体内に「ただいま」と言って入っていくので、魂をリリスから持ってきたのだなと思いました。
だから、ユイの魂が初号機に取り込まれていても不思議じゃないし、だからシンジとのシンクロ率が異常に高いのかもしれません。第一話でまだ搭乗するかどうか決めていないシンジを守りましたしね。
あの物語では、人類はリリスから生まれた存在らしいので、リリスが人類全ての母だし、ユイの姿をしているしで、シンジにとっては二重の意味で「母」の役割を担わされているような気がしますね。
結局、シンジは生い立ちからACだとわかるので、やっぱり思春期の物語を描くには、親子関係というのは重要なモチーフなのでしょう。
そんなわけで、私も最初見て受けた印象で語っているので、実はテキトーな説だったりします(^_^;)
そういえば、私は、テレビ版のラスト見て、人類補完計画のしょうもなさに幻滅しましたw
人の孤独を埋めるための計画なら、パーンの竜に感合させれば、万事解決じゃん!(違う小説の話題になってるって!w)と思ってしまいました。
長文コメントになってしまってすみません。
投稿: こに | 2005.06.06 20:12
ユイが初号機と融合していると思ったのはアスカが映画版で、いつもママは側にいてくれてたのね、とやったヤツからそう思った訳で、いやぁ、まったく勘違いしている可能性は高いですね。
TV版で人類補完計画って決着ついてましてたっけ。なんかどこかへぶっ飛んでたよな気がして仕方ないんですが。
どっちにしろ、中途半端な理解で内容を云々言うのは辞めます(苦笑)
投稿: O-Maru | 2005.06.07 01:11
テレビ版の最終回だかの最初の説明で、どうたらこうたら言い訳していたのですが、これが何じゃこりゃな内容だったので、がっくり来たような記憶がありますw
人類補完計画の全容を明らかにするには時間がないので、人類補完計画進行中のシンジの心の中だけを追ってみましたとか説明していたような。。。。w
だから、ラストへの非難がわき起こったのではないかと推測しております(^_^;)
>どっちにしろ、中途半端な理解で内容を云々言うのは辞めます(苦笑)
いや、それを言ったら私も同じなんで(^_^;)
投稿: こに | 2005.06.07 21:37
はじめまして~♪
確かに、あんな作品が夕方から放送してたなんて、普通じゃないですよね(笑)
投稿: あこ | 2006.06.06 22:05
大人のあたしが夜ひとりで見ても恥ずかしいシーンとかありますもんねぇ...(笑)
投稿: O-Maru | 2006.06.06 23:17