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2005.05.27

サン=テグジュペリ『星の王子さま』

 「たいせつなことはね、目に見えないんだよ...」

 この言葉の輝く、『星の王子さま』の岩波書店の独占版権が1月に切れており、6月には色んな翻訳が出るというのを今朝の朝刊で知った。


星の王子さま

サン=テグジュペリ (著)
内藤 濯 (翻訳)


 この本は、お向かいの10歳くらい年上のお姉ちゃんからお下がりで頂いて、小学校に入るくらいから手もとにあった。多分一番最初の版で昭和42年9月15日第18刷(第1刷はS37.12.27)となっている。

 翻訳の刷り込みというのは非常に重く、例えば、カフカの『変身』なのだけど、同じ訳者でも全く違ったものになる。

 大学時代、映研でカフカの『変身』を映画化した時に脚本を担当した。ホンは高校時代に愛読していた、高橋義孝訳新潮文庫版を元本として起した。冷徹な印象を与える文体がカフカの不条理な世界を見事に描き切っていると思っていた。撮影中、スタッフの女の子が原作を読みたいというので貸したのだが、紛失され、結局、手もとに戻ってくることはなかった。再び、読み返したいと思い、再度文庫を購入したのだけど、事もあろうに同じ訳者により、全篇翻訳し直されていいた。客観的な言い切りのスタイルだったものが、丁寧な言い回しに変っており、そこに繰り広げられる世界は前のものとまったく異なっていた。


変身

カフカ (著)
高橋 義孝 (訳)


 たぶん、刷り込みを受けていたのだろうと思うのだけど、それでも言葉のちょっとした扱いでまったく印象が変ってくるのは間違いない。

 『星の王子さま』にしても、オリジナル版と銘打たれた新版は、イラストの変化はそんなに気にはならなかったものの、本文が横書きで組まれていたのにはびっくりした。それだけで充分読めなくなってしまうことだってある。

 一番最初のものが一番良く感じる。というか、慣れ親しんでしまって、それから抜け出せなくなる。そう云う嫌いは確かにある。しかし、長きにわたって評価されたものには、それなりの価値があるのも確かなのだ。

 新翻訳の『星の王子さま』はどこまで耐えられるのだろうか。何とはなく、興味はある。

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