森田芳光『黒い家』(99)☆☆☆★★
日本映画専門チャンネルで観る。公開当時から大竹しのぶの演技のことは噂に聞いていたが、観るに至るまで5年かかってしまった。
黒い家 監督: 森田芳光 |
森田芳光という監督はもともとからあまり評価していない。映研の仲間うちでは漱石原作の『それから』(85)が評判になっていたが、どうしても理解できなかった。表面的なスタイルの斬新さだけしか見えてこないのである。松田優作は根強い人気があったし(あたしはその乱暴さが嫌いであるが)、そういうのが評価には影響してたと思っている。今回の作品も同じ。スタイルしか見えず、どうもしっくりこない。そのスタイルとはなんぞや、と言われると困るんだけども、ああ、やっているなという感じの類のもの。キューブリックはスタイリッシュな映画を撮るけど、完全に板についている。その形式を用いないとその作品は表現されえないと思わせる。スタイルが作品世界である。森田芳光のスタイルには思いつき程度のチープさがいつも漂っている。しかもそれを売りにしているようなところあるからどうしようもなさがある。
大竹の演技なのだけども、もともとのハッキリしなさがデフォルメされているという感じ。ハッキリしない人間が惨いことをするから、ギャップが激しい。そういった相乗効果はあるのかも。
製作に三沢和子さんの名前がある。懐かしい。この人、20年前の映研時代に、湯布院の映画祭のパーティで話をしたことがあって、当時も森田作品の製作(プロデュース)をしていた。名刺を貰って、新しく公開する映画の感想を事務所に送ってね、と言われた。なんの映画の上映で招待されていたのか覚えていない。森田監督の奥さんだった人だけど、今も奥さんをしているのだろうか。ライス長官に似た感じの人だった。
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